水稲紫黒米新品種「兵系紫５１号」の育成

• 担当機関: 兵庫県立中央農業技術センター
• 研究期間: 1995～1996
• 研究担当者: 岩井正志; 山根国男; 須藤健一; 世古晴美; 西田清数; 池上 勝; 米谷 正
• 発行年度: 1996
• 要約: 「兵系紫51号」は玄米色が黒紫色の紫黒米品種で、赤い酒を作る等、着色原料としての利用が見込まれている。長粒の粳種で、千粒重は25ｇ程度である。色素はアントシアン系色素で、玄米果皮にのみ集積している。
• 背景・ねらい: 紫黒米(インドネシア産)のアントシアン系色素を利用した、赤色の着色酒の製造法が開発されているが、その原料となる紫黒米品種については、酒造メーカーからの要望もあり、インドネシアの紫黒稲を母本として育成を行った。

成果の内容・特徴

1. 「兵系紫51号」は、1982年に農林水産省熱帯農業研究センター沖縄支所において、インドネシア・バリ島在来の紫黒稲を母本に、「イシカリ」を父本として交配されたもので、そのＦ3 種子を1984年に譲り受け、当センタ－酒米試験地において翌年から選抜固定を図り、育成したものである。
2. 出穂、成熟期は「金南風」よりそれぞれ2日、5日早い中生種である。稈長は108cmの長稈で、穂長は長く、穂数の少ない長稈穂重型である（表１）。
3. 芒は中程度発生し、やや長い。ふ色は黄白で、芒及びふ先色は出穂から約一週間後に一時赤紫色に染まるが、その後退色し、成熟期には黄白になる。脱粒性はやや難である。
4. 稈はやや太くて剛く、倒伏抵抗性は中～やや強であるが、成熟期を過ぎると稈質が弱くなり、挫折型倒伏しやすくなる。葉いもち抵抗性は中程度で、縞葉枯病抵抗性をもつ。
5. 玄米は長粒で粒厚は薄く、千粒重は25ｇ前後の粳種である。玄米の色は黒紫色で、色素の集積は果皮部分のみで胚乳内部には認められない（表１）。
6. 収量性は、粗玄米重で「金南風」の精玄米重に対して70％と低い（表１）。

成果の活用面・留意点

1. 現在、用途は清酒の着色原料であるが、天然色素としての利用拡大が見込まれる。
2. 落ちばえによる混種を防ぐために同一ほ場で連作することが望ましい。収穫、乾燥、調整に際しても混入防止に十分留意する。
3. 長稈で挫折型倒伏しやすいので、多肥栽培は避ける。成熟期を過ぎると稈や枝梗がもろくなり収穫しにくくなるので、適期に収穫する。

• カテゴリ: 乾燥 縞葉枯病 酒造好適米 新品種 水稲 抵抗性 品種