純CO2ガス放出方式のFACE装置

タイトル 純CO2ガス放出方式のFACE装置
担当機関 (独)農業技術研究機構 東北農業研究センター
研究期間 1998~2000
研究担当者 Mark Lieffering
岡田益己(東北農研)
吉本真由美(農環研)
金 漢龍(科学技術振興事業団)
小林和彦(農環研)
中村浩史(科学技術振興事業団)
発行年度 2001
要約 ブロワーを用いないで純CO2ガスを直接フィールドに放出する、軽量で低価格のFACE(開放系大気CO2増加)装置を開発した。
キーワード FACE、開放系大気CO2増加、CO2、気候変動
背景・ねらい 21世紀半ばに予想される大気CO2濃度の上昇が、水稲・水田生態系に及ぼす影響を、FACE実験によって解明するために、水田への設置が容易で低価格の装置を開発する。とくに既往のFACE装置ではブロワーの気流攪乱による環境改変が問題になっているので、ブロワーを使わずに、ガス圧を利用して純CO2ガスを放出する新しい方式を開発する。
成果の内容・特徴 1.
液化炭酸ガスを気化し、約0.7MPaの圧力で試験圃場の制御装置に供給する。
2.
1片5mの園芸用の灌水チューブを水稲群落上約50cmに8角形に配置し、直径約12mのリングを作る。風上側3辺のチューブからCO2を放出する。無風時は1つ置きに4辺のチューブから放出し、10秒間隔で他の4辺と切り替える。リング中央の群落直上で大気をサンプルし、CO2濃度をCO2分析計で測定する。その濃度が設定値になるように、圧力制御弁の開度をPIDアルゴリズムで制御する。この制御プログラムをデータロガーに組み込む(図1)。チューブに供給されるガス圧は最大0.1Mpa程度である。
3.
ブロワー型FACE装置では、直径30cm程度の配風ダクトと32本の放出パイプを圃場周囲に配置し、50m3/分程度の有圧ファンでダクトに希釈ガスを送る。これに対して本装置の資材は、灌水チューブ8本、それを支えるパイプハウス用直管24本、接続用の水道用ホース類で、いずれも市販品である。軽量なので軟弱な水田にも容易に設置できる。
4.
FACE装置の動的制御性は、1分間の平均CO2濃度が、設定値の±10%に入る時間割合で評価する。時間割合は弱風域で低下するが、風速が1.5~2m/s以上でほぼ安定する(図2)。本装置の期間平均割合は他のFACE装置に比べて低いが、同じ風速域で比較すると(図2棒グラフ)、イタリアの装置と同程度、米国のBNL方式よりやや低い性能である。
5.
リング中央のCO2濃度がほぼ設定値に維持されるのに対して、周囲では100ppm弱高くなる。0.3m/s以上の風速域では均一な分布が得られる(図3)。期間平均では、リング内の60%の面積で、設定値+15%以内の濃度を達成できる。この面積割合は米国の装置とほとんど差がない。
6.
CO2消費量は約0.3 kg/m2 hで、米国のBNL方式と大差なく、イタリアのFACEの約1/4である。
成果の活用面・留意点 1.
2001年度に中国、オーストラリアで本仕様による装置が建設され、実験実施中である。
2.
放出チューブの高さが制御性に影響するので、草丈の伸張とともにチューブ高を上昇させる。
3.
風速が大きいほど時間・空間的制御性が向上するが、5m/s以上の強風では放出ガス量が不足する。強風地域では放出能力を増すための対応が必要となる。
図表1 211138-1.gif
図表2 211138-2.gif
図表3 211138-3.gif
カテゴリ 水田 水稲

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