タイトル | 抵抗性品種を加害するバイオタイプ発達に及ぼす害虫の生活史特性 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 | 2001~2004 |
研究担当者 |
鈴木芳人 山中武彦(農環研) |
発行年度 | 2002 |
要約 | 作物を加害するステージおよび交尾と移動の前後関係によって害虫の生活史を4タイプに類型化し、それぞれについてバイオタイプの発達速度を予測するシミュレーションモデルを構築した。バイオタイプの発達速度には害虫の交尾時期、潜在的増殖率、増殖の密度依存性が強い影響を与えることが示された。 |
キーワード | バイオタイプ、抵抗性、生活史、モデル |
背景・ねらい | 環境負荷の軽減と防除の省力化を両立させるIPM素材として作物の抵抗性機構の活用が脚光を浴びており、遺伝子工学等の手法を用いた抵抗性品種の育成が広範に進められている。しかし、普及に移された抵抗性品種がそれを加害できるバイオタイプの発達によって感受性化した事例は数多く、効果が持続する抵抗性品種の開発指針が求められている。そこで、汎用性のあるバイオタイプ進化モデルを構築し、害虫の生活史特性がバイオタイプの発達に及ぼす影響を解明する。 |
成果の内容・特徴 | 1. モデルには抵抗性品種作付け率、害虫の移動能力とロジスティック型増殖:Nt+1=NtL/{(1+(L-1)/KNt)bを前提とした潜在的増殖率(L)および増殖の密度依存性(b)、遺伝子の初期頻度と優性度などのパラメータが組み込まれており、汎用性が高い。 2. バイオタイプの発達に及ぼす交尾時期の影響は、幼虫期と成虫期に作物を加害し両ステージに選択圧がかかるウンカ型と、成虫期は食性が変わるために幼虫期だけに選択圧がかかるチョウ型で異なり、ウンカ型では移動後に交尾する種で、逆にチョウ型では移動前に交尾する種でバイオタイプがより速く発達する。チョウ型移動後交尾ではバイオタイプ遺伝子初期頻度が低ければ25世代以上にわたりバイオタイプが発達しない(表1,図1A、B)。 3. 羽化したパッチからの移出率の高さはバイオタイプ遺伝子頻度が低い間はその増加速度を速めるが、遺伝子頻度が高まるにつれて増加速度を遅らせるので、遺伝子頻度が50%に達するのに要する世代数に及ぼす影響は少ない(データ省略)。 4. 潜在的増殖率が高い害虫ほどバイオタイプの発達が速まる(図1C、D)。 5. バイオタイプは、密度が高まるほど増殖率が低下する害虫ではより速やかに発達する(データ省略)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 抵抗性を付与した品種を加害できるバイオタイプ遺伝子の初期頻度、バイオタイプ遺伝子の優性度、害虫の生態特性などを事前に調査することにより、このモデルを用いて抵抗性の崩壊がおこるまでの期間を抵抗性品種の作付け率別に予測することができる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | 病害虫 害虫 省力化 抵抗性 抵抗性品種 品種 防除 |