タイトル | ネコブセンチュウの抵抗性トマトに対する病原性を判定する遺伝子マーカー |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 | 2000~2002 |
研究担当者 |
伊藤賢治 徐建華(東京大学) 水久保隆之 奈良部孝(北農研) |
発行年度 | 2002 |
要約 | ネコブセンチュウ抵抗性トマトに寄生・加害するアレナリアネコブセンチュウ、サツマイモネコブセンチュウ、ジャワネコブセンチュウの抵抗性打破系統は、設計した2組の遺伝子マーカーによって、非寄生性系統と識別することができる。 |
キーワード | ネコブセンチュウ、トマト、抵抗性品種、病原性、PCR、耕種的防除 |
背景・ねらい | 植物寄生線虫の被害は同一作物の連作により助長される。線虫抵抗性品種を導入すると線虫被害を回避するだけでなく、線虫の寄主を圃場から除去することにより線虫の密度を極端に低下させる防除法として有効であり、長期的な線虫被害の回避が可能となる。しかし、ネコブセンチュウにおいてはトマトの線虫抵抗性品種に寄生・加害できる抵抗性打破系統が発達しているため、トマトの栽培では圃場に分布する線虫の病原型を把握したうえで、品種の導入等の対策を行う必要がある。 本研究では、圃場に分布する線虫の病原性を簡便にモニターするために、ネコブセンチュウの線虫抵抗性トマトに対する病原性を判別するマーカーの探索とその利用法を確立する。 |
成果の内容・特徴 | 1. サツマイモネコブセンチュウ、アレナリアネコブセンチュウ、ジャワネコブセンチュウより抽出したDNAをRAPD-PCRで増幅し、線虫抵抗性トマトに対する抵抗性打破系統に特異的な遺伝子マーカーを探索した。その結果をもとに、抵抗性打破系統検出のためのPCRプライマーを作成した(表1)。 2. PCR反応条件は表2の通りである。 3. プライマーMVC-F3およびMVC-R2を用いたPCRでは病原性に関係なく873bpのDNAが増幅される。このPCR産物を制限酵素Nde Iで処理すると、抵抗性打破系統のDNAのみ約400bpの2つの断片に切断される。また、プライマーMVC-VFとMVC-R1によるPCRでは、抵抗性打破系統でのみ1,032bpのPCR産物が生じる(図1)。ただし、線虫抵抗性トマトの栽培歴の無い圃場から検出された抵抗性トマト寄生性系統は、非寄生性系統と同じ反応となり区別できないことがある。 4. 雌成虫1頭からのDNAの抽出は、マイクロ遠心チューブ内の10μlの滅菌水中で雌成虫をすりつぶし、Lysis Buffer(10mM Tris-HCl (pH 8.0)、1mM EDTA、1% Nonidet P-40、100μg/ml Proteinase K)等量を加えて55℃60分、95℃10分の処理を行う手順が失敗が少ない。 |
成果の活用面・留意点 | 1. このマーカーを利用して野外個体群における病原性の迅速な検診が可能となる。また、抵抗性トマトに対する異なる病原型が混在する条件下において、線虫抵抗性打破系統の個体群動態の追跡が可能となる。 2. 本試験で用いたマーカーは抵抗性トマト連作により発達した抵抗性打破系統を識別できるが、選択圧(抵抗性トマト)の無い環境に発生する抵抗性トマト寄生性系統は非寄生性系統と区別できない可能性がある。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
カテゴリ | 病害虫 抵抗性 抵抗性品種 トマト 品種 防除 |