タイトル | シングルプライマーを用いたrep-PCR法によるイネいもち病菌個体識別 |
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担当機関 | 九沖農研 |
研究期間 | 2003~2005 |
研究担当者 |
鈴木文彦 荒井治喜 |
発行年度 | 2004 |
要約 | イネいもち病菌の転移因子であるPot2を標的にし、末端に位置する逆向き反復配列内に新たに設計したシングルプライマーを用いてrep-PCRを行うと、2種類のプライマーを用いる従来の方法より、明瞭かつ高精度で個体識別が可能となる。 |
背景・ねらい | イネいもち病菌集団の遺伝的多様性、新レースや薬剤耐性菌出現の遺伝的背景などを知るためには、個体識別技術とそれを利用した個体群構造の解析が必要である。ゲノム中に多数のコピーが存在する転移因子Pot2を標的にし、内部配列に基づく2種類のプライマー(Pot2-1、Pot2-2)を用いる rep-PCR(Pot2 rep-PCR法;Georgeら,1998)は、簡便に菌株間の多型を検出できることからイネいもち病菌の個体識別法として広く用いられているが、再現性がやや劣り、検体数が多くなるとフィンガープリント(FP)の判別が困難である。そこで、新たなプライマーの設計と簡易で精度の高い検出条件の検討を行う。 |
成果の内容・特徴 | 1. Pot2の両末端部には45bpの逆向きの反復配列(TIR)が存在するため、この内部にプライマーを設定すれば1種類のプライマーのみでPot2間の領域の増幅が可能となることを見出し、新たにシングルプライマー(Pot2-TIR)を設計した(図1)。 2. PCRの反応液組成と反応条件は、図2に示した。泳動距離10cmゲル(アガロース濃度1%)を使用し約90分間の電気泳動を行うことにより、すべての供試菌株において6kb以下に10本前後のバンドが検出され、FPの多型が検出できる(図3右側)。 3. 新設計のプライマーを用いれば、従来法のPot2-1, -2プライマー(Georgeら、1998)に比べ、増幅産物のサイズが全体的に小さくなりFPの読みとりに好適で、遺伝子型間の差異が容易に判別できるようになる(図3)。さらに、従来法よりも各FPの再現性が高く、非特異的なバンドも大幅に減少する。また、簡易な泳動槽でも鮮明なバンドが得られ、使用する酵素量は従来法の半分で十分と経済的であり、電気泳動に7時間を要した従来法に比べ大幅な時間短縮も可能である。 4. 別種の転移因子MGR586のTIR内に設計したシングルプライマー(MGR586-TIR)を用いた場合でもFPの多型が検出可能であり、複数のrep-PCRを組み合わせることにより個体識別精度がさらに向上する。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 農業生態系内の広範な場面での個体識別が可能となり、地域あるいは圃場内におけるいもち病菌集団の多様性や優占する遺伝子型を明らかにできる。 |
図表1 | |
図表2 | |
カテゴリ | いもち病 耐性菌 薬剤 |