非病原性フザリウム菌と弱毒ウイルスによるナス科果菜のネコブセンチュウ害抑制

タイトル 非病原性フザリウム菌と弱毒ウイルスによるナス科果菜のネコブセンチュウ害抑制
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究期間 2006~2010
研究担当者 水久保隆之
津田新哉
発行年度 2007
要約  トバモウイルス属弱毒植物ウイルスをナス科のトマトとピーマンに接種して定植し、その後非病原性フザリウム菌を土壌に接種処理を行うと、ネコブセンチュウの被害の表象である根こぶの数が減少する。圃場のこの処理区の収量は慣行防除と同等である。
キーワード ネコブセンチュウ、ナス科植物、トバモウイルス、非病原性フザリウム菌
背景・ねらい  ネコブセンチュウは広い寄主範囲を持ち、露地根菜類から施設果菜類におよぶ広範な作物に著しい減収や枯死を起こすこと、侵入すると根絶が難しいことから、最も有害な病害虫の一つとされている。線虫防除においても、農薬防除に代わる環境保全型農業技術や有機農業技術が志向され、微生物防除資材への期待は大きいが、既存の線虫防除用微生物資材には速効性、高い防除価、持続性を兼ね備えるものがなく、農薬代替技術の地位を確立した資材はない。近年、トマト萎凋病等フザリウム病に対し高い発病抑制効果を持つ非病原性フザリウム菌のF13株(以下、F13株)に、ネコブセンチュウの感染を抑制する現象が認められた(土壌伝染病談話会レポート23号:40-48、2006)。そこで、非病原性糸状菌によるネコブセンチュウ防除技術の開発に資するため、F13株の線虫防除効果に影響する要因を検討する。
成果の内容・特徴
  1. 非病原性フザリウム菌F13株が植物に感染するタイミングは、サツマイモネコブセンチュウ(以下線虫)による被害の程度に影響する。すなわち、F13株が線虫と同時かそれよりも先に植物(トマト)に感染した場合には線虫害は抑制されないが、F13株が線虫よりも遅れてトマトに感染した場合には線虫の卵嚢形成数は有意に低下し、根こぶ形成数も少なくなる(図1)。
  2. 植物(トマト)がトバモウイルス属弱毒植物ウイルス(トマトモザイクウイルスのL11A株)とF13株に重複感染すると、F13株が単独では線虫の被害を抑制しないタイミングで感染した場合でも、線虫の被害(根こぶ形成)は小さくなる(図2)。
  3. ピーマンでも同様の現象が認められる。植物(ピーマン)が線虫の感染2日後にF13株にも感染すると線虫の被害(根こぶ形成)は小さくなるが、あらかじめトバモウイルス属弱毒植物ウイルス(トウガラシマイルドモットルウイルスのNo.16株)に感染し、線虫の感染2日後にF13株にも感染すると、根こぶ形成はさらに少なくなる(図3)。
  4. トマトの雨よけ夏秋栽培においてトマトモザイクウイルスのL11A株(以下、弱毒V)接種苗とF13株の定植2日後処理を組み合わせた試験区では、果実総重量がF13株と弱毒Vの単独処理区に比べて高く、慣行防除と同等である(図4)。また、この区の根こぶの形成程度(根こぶ指数)は、単独処理区より低く抑制される(データ省略)。
成果の活用面・留意点
  1. この現象は、ネコブセンチュウの新しい生物防除技術の開発に利用できる可能性がある。
  2. 非病原性フザリウム菌F13株には、それがあらかじめ育苗床土に施用され、植物がネコブセンチュウより先に非病原性糸状菌に感染した場合や、苗の定植とほぼ同時に非病原性糸状菌を圃場に施用した場合、すなわち植物がネコブセンチュウと非病原性糸状菌にほぼ同時に感染する場合、に線虫害を助長するおそれがあるので注意する。
図表1 211675-1.gif
図表2 211675-2.gif
カテゴリ 有機農業 有機栽培 病害虫 育苗 害虫 栽培技術 植物ウイルス とうがらし トマト なす 農薬 ピーマン 防除

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