タイトル |
乳房炎新規発症の低減効果が期待できる改良型乳頭清拭装置 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター |
研究期間 |
2003~2008 |
研究担当者 |
オリオン機械(株)
吉田邦彦(根釧農試)
後藤裕
高橋雅信(根釧農試)
平井綱雄(根釧農試)
平田晃
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発行年度 |
2008 |
要約 |
衛生的に管理できるように改良した乳頭清拭装置は、除菌効果が高く、平均清拭時間30秒程度で長期連用すると、乳房炎新規発症率とバルク乳中の体細胞数の低減が期待できる。本装置による乳牛への乳頭刺激は適切で、繋ぎ飼いでの搾乳作業は円滑に行われる。
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キーワード |
乳牛、乳頭清拭、乳頭清拭装置、変法ミネソタ法、除菌効果、乳房炎
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背景・ねらい |
環境性乳房炎は、主として乳頭表面に付着する細菌に由来するため、搾乳中の乳房炎感染の低減を目標に、乳頭刺激が適切で除菌効果も変法ミネソタ法と遜色ない乳頭清拭装置を開発した(平成18年度共通基盤・作業技術、畜産草地主要成果)。その装置について、酪農現場において衛生的に長期使用できるよう清拭ブラシ等を改良し、基本性能を確認する。また、本装置を清拭作業に問題のある農家で長期連用した時に、ねらいとした乳房炎の新規発症を低減させる効果が得られるか、従来のタオル清拭(1頭につき1布以上)と同様に円滑な搾乳作業が可能かなどについて明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 本装置は、清拭カップ(手元スイッチ付)、洗浄水ポンプ、汚水吸引ケースおよび制御部で構成され、カップ内で洗浄水と正逆転する清拭ブラシによって乳頭を清拭する装置である(図1)。各乳頭の洗浄清拭では、ブラシ回転インターバル(回転0.7s+停止0.1s)回数が6回以上で、変法ミネソタ法と同等以上の除菌効果を有する(表1)。
- 本装置の主な改良点と効果は、次の2点である。1)清拭ブラシ(根元・側面用と先端用)の素材を細菌が蓄積するナイロン植毛から全てシリコン成形とし、かつ、工具を使わず簡単に清拭カップと脱着できる形状にした。また、清拭作業終了後に抜き取って洗浄・殺菌槽に浸漬し、衛生的に管理できる。2)清拭カップホルダは、1頭の乳頭清拭が終了する毎に清拭ブラシを自動すすぎする機能を有しており、5秒のすすぎで、清拭ブラシに付着する汚れをATP値(有機物汚染の指標)で約1/10にまで洗い流すことができる。
- 繋ぎ飼い農家で、本装置を2008年6月下旬から長期連用した調査事例で、前年の暑熱期間におけるタオル清拭と比較して、乳房炎新規発症率が明らかに低下し、バルク乳中の体細胞数が平均15万個/mL程度まで減少するなど乳質改善効果がある(表2)。
- 上記調査農家での本装置使用時の搾乳作業性は、導入前のタオル清拭(1頭1布以上)と比較して遜色なく、乳頭刺激は良好で、1頭あたりの機械搾乳時間(ティートカップ装着から離脱まで)は概ね1min以上短縮されている(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 開発機は、2009年度から市販化の予定である。
- 乳頭清拭の前に適切な前搾りを行い、乳頭清拭時間は1頭あたり30秒程度確保する。汚れのひどい時は、タオルで下拭きしてから装置を使う。搾乳直後に乳頭消毒する。
- 使用前にはブラシの回転および洗浄水の噴射等を必ず点検し、作業終了後には、乳頭清拭カップから汚水吸引ケースまでを洗浄し、清拭ブラシは抜き取って洗浄殺菌する。
ブラシの損耗があれば交換する。交換の目安となる延べ清拭頭数は、根元用:3,000頭、先端用:6,000頭、側面用:9,000頭である。 - 体細胞数が10万個/mL以下で清拭に問題のない場合、乳質改善効果は期待しにくい。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
市販化
乳牛
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