らい小麦子実の食品利用適性

タイトル らい小麦子実の食品利用適性
担当機関 北海道農業試験場
研究期間 1993~1997
研究担当者 中司啓二
山内宏昭
唐澤敏彦
瀬口正晴
秦 隆夫
発行年度 1997
要約 らい小麦の北海道への導入を検討する場合、子実の利用適性が大きな鍵となる。らい小麦子実を用いて試作したパン、クッキー、味噌、麺、ビールは、従来にない独特な風味を持ち、地域特産品等への利用可能性がある。
背景・ねらい らい小麦は夏の寒冷な気候に強く、小麦栽培が不適な根釧地域でも、適切な防除を行うことで栽培が可能である。この麦は乾物生産力が高く、わらの供給に最適であるが、子実収量も高い。らい小麦を円滑に導入するためには、栽培法の確立と同時に、子実の用途開発が重要である。そこでらい小麦子実の各種食品への利用適性を検討し、多様な消費者のニーズに応える地域特産的食品を造るための、基礎的データの収集を目的とした。
成果の内容・特徴
1.パン・クッキー:
らい小麦粉は粘りが強く、単用でパンを造るのは難しい。しかし、パン用の小麦粉に数~25%程度(重量比)加えると、小麦粉単用より容積が増える (図1) 。これはらい小麦の水溶性画分にあるα-アミラーゼと思われる酵素様物質の働きで、水溶性画分と小麦粉でパンを造ると、容積が増えることが確認されている。また、らい小麦粉を加えたパンは、独特な甘い香りと褐色の焼き色があり、パンのヴァリエーションを増やすのに有効である。クッキーも焼き色が褐色で、歯切れが良くて香ばしいため、食味試験では小麦より評点が高い。
2.味噌:
らい小麦を元麹とした味噌は、米味噌と比較すると蛋白溶解率が高く、色が濃い特徴を持つ(表1)。麦味噌は一般に旨みが強いといわれるが、らい小麦味噌も遊離アミノ酸が多くて旨みが強く、香気成分で抗酸化、抗腫瘍活性の機能性物質HEMF(4-Hydroxy-2-ethyl-5-methyl-3-furanone)が認められる。ただし、らい小麦味噌は種皮が残るため、漉し味噌とする必要がある。
3.麺:
らい小麦麺はうどんやそばと比較すると独特な風味はあるが、ピークがはっきりせず低い荷重で破断されるため、歯切れが悪くてこしも感じられない(図2)。ただし、中力粉を2割(重量比)加えるとかなり改善され、5割の混合でうどんと同様な食感となる。
4.ビール:
ビール用モルトでは、麦芽のエキス含量や澱粉糖化酵素力が高く、こくが強い点が注目されるが、ろ過速度が遅く、最終発酵度が低いという難点がある(表2)。
成果の活用面・留意点
  1. 試験の規模は、いずれも実験室および小テストプラントレベルである。
  2. パンの容積を増加させる酵素様物質は、パン生地改良資材として利用可能性がある。
  3. ビールのろ過速度はもみ殻等の添加で改善できるため、地ビールとしては利用可能性がある。
  4. らい小麦子実は正常粒でもアミラーゼ活性が高いことが明らかになりつつある。このため、正常粒でも穂発芽粒でもパン用や麺用に利用する場合、大きな違いは認められない。
  5. 用いた品種はすべてPRESTO(ポーランド産)である。
図表1 211828-1.gif
図表2 211828-2.gif
図表3 211828-3.gif
図表4 211828-4.gif
カテゴリ 病害虫 機能性 くこ 小麦 そば 品種 防除 良食味

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