タイトル |
コムギ及び近縁種のESTカタログ |
担当機関 |
北海道農業試験場 |
研究期間 |
1999~1999 |
研究担当者 |
下坂悦生
栗原志保
半田裕一
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発行年度 |
2000 |
要約 |
北海道農業試験場等わが国の10研究機関が参画する国際共同プロジェクトのもと、コムギ及びその近縁種を材料として、各種器官で発現している遺伝子情報(Expressed Sequence Tags; EST)を網羅的に解析し、そのカタログ化を行った。現在24,346ESTが国際データベースに登録、公開されている。
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背景・ねらい |
1998年8月にカナダで開催された第9回国際コムギ遺伝学シンポジウムにおいて、コムギの国際EST事業(ITEC; International Triticeae EST Cooperative)が合意され、日本では横浜市立大学木原生物学研究所を中心に、当研究室を含め、産学官10研究機関により、コムギ及びその近縁種のEST事業の国際分担を実施することとした。EST解析はゲノム研究の一端を担う研究であり、すでにヒトやシロイヌナズナ等で大規模に実施され、大きな成果をあげている。そこで、本研究では、コムギ及びその近縁種を材料として、今後のゲノム研究推進の強力なツールとなるESTカタログを作製する。
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成果の内容・特徴 |
- 日本を含めITEC参加13カ国35研究グループにより、総計24,346ESTがITECのESTデータベースに登録されている。そのうち、コムギESTが16,628クローンで全体の68%を占めており、他にオオムギ、ライムギなどのEST配列情報が登録されている(表1)。また、EST解析に使用された器官は、葉、幼穂、胚乳、根、花序などである。
- 国際共同研究のフェイズ・に関する取り決めでは、各研究参加グループは種・器官等を特定したcDNAライブラリーを基に、300塩基以上の長さを持つ1000クローン以上を登録することとしている。これを受けて、日本の共同研究グループは、幼穂由来のcDNAライブラリーを基に、2130クローンのEST配列情報をデータベースに登録している。このうち、適応生態研究室からの登録は、国内での研究分担取り決め10%に相当する204クローンである。登録された情報の平均サイズは515塩基である(図1)。日本での共同研究で明らかにされたクローンについて、クローン間の相同性を解析すると、336のクローングループと他と重複しない274の単一クローンとからなる610の独立クローングループに分類することができる(図2)。各グループについて、データベース中の登録遺伝子との相同性を検定すると、全体の87%にあたる532クローングループは既知の登録遺伝子との相同性が見られるが、残りの78クローングループは未知の配列からなると判断される。
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成果の活用面・留意点 |
- ITECのEST配列情報には、インターネット上で自由にアクセスすることができる(URL; http://wheat.pw.usda.gov/genome/)。また、すべての配列情報は、GenBankのdbESTセクションにも登録されている。さらに、ITECのサイトにおいては、ESTデータベースに対して、BLAST検索を実施することが可能である。なお、ITECで得られたESTクローンは、GrainGenes (USDA ARS Center for Bioinformatics and Comparative Genomics, Cornell University)で保管されており、将来的にはGrainGenesによる配布が計画されている。
- コムギやその近縁種におけるゲノム研究推進の重要な基礎データを提供することができ、今後のコムギ等の分子育種の発展に寄与できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
育種
大麦
データベース
ライ麦
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