シベリア永久凍土地帯のカラマツ林生態系 -地上部・地下部現存量と土壌特性-

タイトル シベリア永久凍土地帯のカラマツ林生態系 -地上部・地下部現存量と土壌特性-
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 金澤 洋一
大澤 晃
森 茂太
松浦 陽次郎
梶本 卓也
小池 孝良
発行年度 1996
背景・ねらい 極域の二酸化炭素収支に大きな季節変化をもたらす生態系として、とりわけ周極域の中でも広大な面積を占める中央・東シベリアのカラマツ林生態系が注目されている。しかもこの地域は、他の周極域にはみられない永久凍土上に成立した唯一の森林生態系であると同時に、この地域はこれまで研究の空白域であった。我々は、永久凍土上に成立した、落葉針葉樹であるカラマツのみからなる特異な生態系の構造を明らかにするために、東シベリアと中央シベリアの数か所で、地上部・地下部の現存量調査と土壌の有機炭素・窒素の集積量調査を行ってきた(図1、2)。
成果の内容・特徴 永久凍土上のカラマツ林生態系(樹齢150~240年)が、従来の周極域で研究された森林とは異なる構造と特徴を持っていることが明らかになった。第一の特徴としては、地上部現存量と地下部現存量の比率をとると、従来の森林生態系の測定値に比べて地下部の比率が高いことである。地上部と地下部を合わせた現存量は、ha当たり10~35tonと小さいが、そのうち28~40%が地下部現存量であった(表1)。太さ5mm以下の細根まで含めると、地上部:地下部の現存量比率は、1:1か地下部の方が大きい比率となる。
第二の特徴は、永久凍土に集積した土壌有機炭素と窒素の集積量である。東シベリアの平坦な地形面に広がるカラマツの森林ツンドラでは(写真1)、巨大な地下氷(写真2)を含む大河川の堆積物を母材とした永久凍土が存在し、土層1mまでの深さにha当たり平均約180tonの土壌有機炭素と14tonの窒素が集積していた。土壌の炭素と窒素の存在比率を表すC/N比は、これらの土壌では、北方の土壌としてはかなり低い値(10~14)を示した。一方、過湿条件下に局所的にみられる有機質土壌や、土壌母材が岩屑質の中央シベリアと山岳森林ツンドラ土壌では、C/N比が約20かそれ以上で、北米大陸の常緑針葉樹の北方林土壌と類似していた。
過去数万年にわたって氷河に覆われなかった東シベリアには、大河川の堆積物を母材とするC/N比の低い(=相対的に窒素が多い)土壌が分布し、同じ周極域でもこれまで研究されてきた北米大陸の常緑針葉樹林生態系には、母材に氷河の影響を受けた土壌が分布する。両者は同じ周極域にありながら、異なる構造と機能を持っているといえる。今後、温暖化の影響予測についても、ユーラシア北東部のカラマツ林生態系の諸特性を考慮した研究が必要である。
なお、本研究は環境庁地球環境研究総合推進費(シベリア凍土)による。
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