木材の液化技術の開発

タイトル 木材の液化技術の開発
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 山田 竜彦
発行年度 1997
背景・ねらい 地球環境保護や資源リサイクルの観点から、廃材、樹皮、古紙、おがくず等の木質系廃棄物を有効利用する方法の開発が待望されている。近年、これら廃棄物をフェノール類やアルコール類で処理して汎用の有機溶剤に完全に溶解する技術が開発された(木材液化法)。液化物はプラスチックの原料となり、新しい付加価値を持ったマテリアルとして生まれ変わる。本研究では、各液化法における液化物の組成と反応機構の解明し、木材の効果的な液化法を開発することを目的とした。そして、これらの検討より炭酸エチレンを用いて極めて高速かつ低エネルギーで木材成分を分解する新規の液化法を開発した。
成果の内容・特徴 木質系物質はフェノール類やエチレングリコール等の高沸点アルコール類と酸触媒存在下、150℃程度で処理することによりメタノール、ジオキサン、アセトン等の汎用有機溶剤に完全に溶解するタール状の物質に変換できる(写真1、写真2)。フェノール系液化物はノボラック状の成型物や接着剤として、またアルコール系液化物はウレタン樹脂等の原料として利用可能である。

各液化反応でのセルロースの挙動について検討した。ポリエチレングリコール(PEG)等を使用するアルコール系液化では、セルロースは解重合し、対応するアルコールとのグルコシドを生成した。そして、長時間の反応でグルコシドは分解し、レブリン酸アルコールエステル類を生成した(図1)。一方、フェノール系液化では、完全な液化物中には糖骨格が残存しないことを確認した。セルロースは強度に分解され、フェノールと縮合して液化物中に存在すると考えられる。以上の結果、液化条件の違いで生成物の分子種が大きく異なることが明らかとなった。液化物から生分解性樹脂等の機能性樹脂を調製する場合には、反応条件を制御することが極めて重要と考えられる。

図2に、種々の液化試薬における液化残渣率の経時変化を示す。ここでは炭酸エチレンを新規の液化試薬として使用した。炭酸エチレンは酸条件下で分解しアルコール類となる高誘電性物質である。炭酸エチレンを用いた場合、セルロースは、約10分程度の驚くほど短時間で完全に液化した。この反応速度は、エチレングリコールを用いた場合と比較して約28倍、アルコール系液化で最速であるPEG400/エチレングリコール(8/2,w/w)混合液化と比較しても約10倍速い。また、シラカンバ木粉を用いても約15分程度の短時間で完全な液化物が得られた。これら液化物はウレタン樹脂等の原料として利用可能であった。炭酸エチレン等の環状炭酸類を木材等のバイオマスに直接作用させる試みは、これまでにない新しいものである。
図表1 212450-1.jpg
図表2 212450-2.jpg
図表3 212450-3.gif
図表4 212450-4.gif
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カテゴリ 機能性

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