渓流水中の有機物の動態と生成メカニズムの解明

タイトル 渓流水中の有機物の動態と生成メカニズムの解明
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 金子 真司
荒木 誠
古澤 仁美
鳥居 厚志
西本 哲昭
深山 貴文
清野 嘉之
発行年度 1997
背景・ねらい 近年、近畿の水がめとなっている琵琶湖では、有機汚濁の進行による水質の悪化が懸念されている。琵琶湖の集水域のおよそ半分は森林であることから、琵琶湖への有機物の給源として森林は重要な位置を占めており、渓流水に含まれる有機物の動態に関心が持たれている。しかしながら、渓流水中の有機物に関してはこれまでほとんど研究されて来なかったためにその実態はよく分かっていない。そこで、本研究では渓流水中の有機物濃度の経時変動や流域の立地条件と渓流水中の有機物濃度との関係について調査を行った。
成果の内容・特徴 滋賀県志賀町の四ツ子川の支流(流域面積6.57ha)に量水堰堤を設けて、水量の自動観測及び水質の定期調査を行った(写真1)。その結果、硝酸イオン以外の無機成分濃度は変動係数(C.V.)が20%以下と安定していたのに対して、BOD、COD、溶存有機炭素(DOC)などの有機物成分はC.V.が50%以上と変動が大きいことが判明した。

DOC濃度は、図1に示すように1mg/lを越えることはなく全般的に濃度は低かった。ただし濃度の変動は大きく、高い値が集中する時期は見られたが季節的なパターンは見られなかった。調査渓流の流域では土壌水中のDOCや硝酸イオンの濃度は渓流水に比べて高かったので、降雨や降雨後には土壌からそれら成分の溶脱が促進され、渓流水中の濃度が高まると予想された。そこで流量との関係を検討したところ、硝酸イオンは流量が増加すると濃度が高まる傾向が認められたが、DOCは流量との間には一定の関係は見られなかった(図2)。ただし、降雨時に渓流水の採取を行った際には溶存有機炭素の濃度上昇が確認されたので、降雨時にはDOCも溶脱が促進されるが流出のメカニズムは硝酸イオンとは異なるであろうと考えられた。

琵琶湖に流入する和迩川、知内川、田川の支流において渓流水中のDOC濃度を測定した結果、流域が広葉樹林で被われた渓流ではスギ・ヒノキ人工林の渓流よりもDOC濃度が高く、流域内に広葉樹と針葉樹の林分が混在する場合は両者の中間の濃度であることが明らかになった(図3)。しかし、広葉樹林の土壌とスギ人工林の土壌において土壌水中のDOC濃度を調査した結果では、サンプル間のばらつきが大きく有意な差は見られなかったことから、渓流水中のDOC濃度が広葉樹林で高くなる原因について、今後さらに調査・研究が必要である。

なお、本研究は環境庁国立機関公害防止等試験研究「湖沼での有機物の動態解析手法の開発に関する研究」による。
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