タイトル | 輸入乾・生シイタケの系統判別 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
馬場崎 勝彦 宮崎 和弘 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 市販シイタケの品種・系統を判別するために、RAPD指標データベースの整備やDNA分析のプライマーを開発して系統判別技術を実用化することで、最近の輸入シイタケの品種・系統を明らかにした。 |
背景・ねらい | 近年のシイタケ輸入の急増は、2001年に中国からの生シイタケに暫定的セーフガードの発動を引き出させるほど、我が国のきのこ生産者に深刻な影響を与えている。急増する輸入シイタケへの対策や問題点を検討する中で、生産団体等から我が国の種菌と考えられるものが育成者の承諾なく諸外国で栽培され輸入きのことして国内に入っている可能性や、輸入きのこを国産と詐称して低価格で販売し国産きのこの相場を低下させている流通業界の姿勢を指摘する声が挙がり、それらの是正を図る必要のあることが分かった。このため、1999年、林野庁は当所に輸入シイタケ等輸入きのこの系統判別法の開発を要請した。これを受け、本課題では、市場に流通する輸入シイタケの系統調査とその動向の把握を行い、系統判別法の実用化に目途をつけた。 |
成果の内容・特徴 | 輸入生シイタケの系統判別1993年から2000年の7年間につくば市近隣の大手スーパーマーケットで購入した中国産生シイタケから分離調製した菌株を、栄養菌糸体不和合検定、RAPD分析等を用いて類別した結果、81点の輸入生シイタケは4種類の系統に分けられた(表1)。系統の移り変わりは見られるが、1999年及び2000年に5カ所で購入し調製した76分離菌株は2系統(A、B)のみで構成されていた。近年、輸入生シイタケが高品質になったと言われている。その背景には、この2系統への集中があると推察した。次に、市販シイタケの種菌95品種と1974年から1976年に国内品種として当所が収集保存している37菌株を対照菌株として、栄養菌糸体不和合検定、RAPD分析等DNA品種判別、並びに、栽培特性や交配因子の分析を行って、中国産生シイタケ4系統の由来を調べた(表2、図2)。この結果、輸入生シイタケの主要2系統A及びBは、当所保有菌株FMC155及び156と極似していることが分かった。系統CとDの品種推定は出来なかったが、系統Cの交配因子の1つは、系統A及びBのものと同等と推定できた。輸入乾シイタケの系統判別原産国が中国と表示された輸入乾シイタケ、どんこ(傘の開きが5~6分)5袋136点と香信(傘の開きが7~9分)2袋80点を、近隣のスーパーマーケット及びディスカウントショップで購入しRAPD分析で類別した。どんこと香信の系統は重なるが、どんこは2系統、香信は3系統に分かれ、香信の主系統はどんこの2系統とは異なった。次に、図1に示すシイタケ89品種のRAPD指標データベースと選抜したプライマー7種を用いるRAPD分析及びSTSプライマーを用いるDNA判別を行い、どんこ2系統と香信の主系統の由来を調べた。この結果、どんこ2系統はFMC155及び156と、香信の主系統はFMC66と区別出来ないことが分かった。図3は解明した5系統の菌床栽培試験を示す。これらの結果は、輸入シイタケの主品種は限られた系統であり、それらの由来や育成過程に四半世紀前に我が国で育成された3品種が何らかの形で関与することを示している。今後、これらの成果は、国が進める違法輸入農産物の水際での阻止、特に、DNA判別技術による輸入シイタケの育成者権侵害の有無の調査や、国内で流通するシイタケの商品名の詐称調査で役立てられる。 なお、本研究の一部は農林水産技術会議委託研究「食品の安全性及び機能性に関する総合研究」及び「国産野菜の持続的生産技術の開発」によった。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
図表6 | |
図表7 | |
図表8 | |
図表9 | |
図表10 | |
カテゴリ | 機能性 しいたけ データベース 品種 |