水不足で形成された葉は光にも強くなる

タイトル 水不足で形成された葉は光にも強くなる
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 北尾 光俊
飛田 博順
丸山 温
発行年度 2003
要約 乾燥ストレスの下で形成された葉では、気孔閉鎖により葉肉C02濃度が低下した際でも、電子伝達能力を高めることで光化学系2.への過剰なエネルギー集積を防ぎ、光阻害を回避していることが明らかになった。
背景・ねらい 植物は乾燥によって水が不足すると、根の割合を増やしたり、葉の面積を減らしたり、気孔を閉じたりします。これは植物が水を保つための対処法です。
ところが、気孔を閉じると、葉からの水分放出は抑えられますが、葉の内部にCO2を取り込めないため、光合成もできなくなってしまいます。さらに、光合成が低下すると葉が吸収した光のエネルギーを使い切れないため、余ったエネルギーが葉内にたまります。すると、光合成効率が低下する光阻害という現象が起こり、つづいて活性酸素が発生して葉に障害を与えることが予想されます。しかし、植物はそれに対して何らかの対策を講じているにちがいありません。そこで、本研究では、水不足による気孔閉鎖によって葉内CO2濃度が低下した場合に、光合成系でのエネルギーの流れと光阻害感受性に何が起きているかを調べ、植物の光合成機能の水不足への対処のメカニズムを明らかにしました。
成果の内容・特徴

ダケカンバでの実験

水不足によく耐えるといわれるダケカンバを実験対象にして、毎日水を与える処理(コントロール)及び、週に1回しか水を与えない処理(乾燥処理)を比較して、その間に形成された葉の光合成特性を調べました。
コントロールでも乾燥処理でも葉内のCO2濃度の低下につれて光阻害の受けやすさ(光阻害感受性)(1-qP)は上昇する傾向が見られ(図1)、水不足により気孔が閉じた時には光阻害感受性が増すことがわかりました。
しかし、乾燥処理ではコントロールと比べて光阻害感受性が低い傾向が見られました。測定に用いた葉は実験開始後に形成されたもので、この結果は長期の水不足に馴れた葉では、気孔が閉じて葉内のCO2が低下しても、光阻害の影響を受けずにすむことを意味しています。

光に強くなるしくみ

それでは、水不足のもとで形成された葉が光阻害感受性を低く保っている仕組みを考えてみましょう。熱としてのエネルギー消費の指標となるノンフォトケミカルクエンチング(NPQ)と、電子によるエネルギー消費の指標となる電子伝達速度を調べた結果(図2、3)、NPQはいずれの処理でも葉内のCO2濃度が低下すると上昇する傾向が見られました。このことは、気孔が閉じた際には、熱としてのエネルギー放出を増やして、光阻害を抑えようとしていることを意味しています。しかし、処理間で比較を行うと、水不足に馴れた葉の方が低いNPQを示しており、熱放出の増加によって光阻害を回避したわけではないことを示しています。一方、電子伝達速度は葉内のCO2濃度の低下とともに低下しましたが、水不足に馴れた葉の方が高かったのです。
以上の結果から、乾燥ストレスを受けた間に生じたダケカンバの葉は、熱としての放出を増やすのではなく、光合成や光呼吸による電子の消費を増やすことで、気孔が閉じて葉内のCO2濃度が低下した際の光阻害を回避していることがわかりました。このことは、乾燥した環境にダケカンバがある程度適応して生育できる要因の一つになっていると考えられます。

詳しくは:Kitao, M. et al. (2003) Physiologia Plantarum 118: 406-413. をご覧下さい。
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カテゴリ 乾燥

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