| タイトル | シカとネズミとササはどのように樹木の死亡に関わるか? |
|---|---|
| 担当機関 | (独)森林総合研究所 |
| 研究期間 | |
| 研究担当者 |
伊東 宏樹 日野 輝明 |
| 発行年度 | 2004 |
| 要約 | 奈良県大台ヶ原では、シカによる森林への被害が問題となっていますが、シカにはマイナスの効果ばかりではなく、ササの量を減らして森林の再生に役立つというプラスの効果もあることがわかりました。 |
| 背景・ねらい | 日本各地でニホンジカ(以下、シカ)が増え、樹木の実生(みしょう;種子から発芽して育ってきた芽生えのこと)や樹皮の採食による森林の衰退が心配されています。奈良・三重県境にある大台ヶ原もそのような場所の一つで、シカの個体数調整を行いながら森林を再生する自然再生のための対策が環境省によって進められています。しかしながら、森林生態系の中で生物はさまざまな相互作用を通して複雑に結びついており、この相互作用ネットワークの理解なしには樹木を含めた自然再生を効率的に進めていくことはできません。 本研究では、大台ヶ原におけるシカ、ネズミ類、ミヤコザサ(以下、ササ)、樹木の実生との関係(図1)を実験的に明らかにすることを目的に行いました。 |
| 成果の内容・特徴 | 野外実験大台ヶ原の森林内にシカの排除、ネズミの排除、ササの刈り取りの3つの処理を組み合わせた実験区を設置し、1997年から8年間、ササの量の変化と、樹木(ウラジロモミ、アオダモ、ブナなど)の実生の発生と生残を調べてきました。まず、シカとネズミはともにササを食べ、ササの量を減らすものの、その影響はシカの方がはるかに大きいことが分かりました(図2)。ネズミによる実生への影響は、発生後の生残については認められませんでしたが、いくつかの樹種では発生数を減らしていました。種子を食べて減らしたのかもしれません。樹種による違い発生後の実生はその多くが、シカに食べられたり、ササによって日光をさえぎられたりして死んでいきますが、その影響の受け方は樹種によってさまざまに違っていました(図3)。たとえば、針葉樹のウラジロモミではシカが、広葉樹のアオダモやブナではササが、それぞれより大きく影響をおよぼしていました。シカの好みや、生残に必要な日光の量の違いが樹種によって異なるためではないかと考えられます。興味深いことに、アオダモやブナでは、シカがササを食べることにより実生が生き残る確率が高くなることがわかりました。これは逆に言うと、シカがいなくなるとササが密生して、実生の生残にとってはかえって不利になったことを意味しています。このように樹木の更新をめぐる生物間相互作用は複雑ですが、シカもネズミもササも多すぎず少なすぎず互いの関係をとおしてバランスよく存在することが、樹木の実生の生存にとって最も好ましいことを本研究の結果は示しています。 本研究の一部は、環境省地球環境保全等試験研究費「生物間相互作用ネットワークの動態解析にもとづく孤立化した森林生態系の修復技術に関する研究」による成果です。 詳しくは:Itô, H. & Hino, T. (2005) Ecological Research 20:121-128をご覧下さい。 |
| 図表1 | ![]() |
| 図表2 | ![]() |
| 図表3 | ![]() |
| カテゴリ | シカ なす |
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