実際の木造住宅の柱や梁はどのくらいの強度的な余裕があるか?

タイトル 実際の木造住宅の柱や梁はどのくらいの強度的な余裕があるか?
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 青井 秀樹
宮武 敦
神谷 文夫
発行年度 2008
要約 木造住宅の柱や梁が、実際にどれくらいの余裕を持って使われているかは良く分かっていません。この研究では実際に建てられた木造住宅の調査を行い、新材料開発に必要な部材の要求性能値を明らかにしました。
背景・ねらい 木造住宅の柱や梁には、屋根や床などの建物自身だけでなく、タンスや机などの家具や、そこに住む人々の荷重が加わっています。また、地震や台風の際には、短時間ですが大きな力が加わります。いずれの場合でも部材に加わる力を一定以内に留めることで、過度に変形したり、壊れたりしないように設計されています。
しかし実建物では、加わる力や変形量が制限値に対してどのくらいの余裕があるかは良く分かっていません。そこで本研究では実際に建てられた木造住宅の柱と梁を調査してこれらを明らかにし、強度の低い材料でも充分安全に使えるかどうかについて調べました。
成果の内容・特徴 調査は、大手住宅メーカーによって実際に建てられた3棟の木造住宅の構造計算書等を用いて行いました。構造計算書には、通常の状態(長期)、地震時や台風時(短期)、および雪が建物に積もった時(積雪時)における荷重と、それらに基づく力や変形量が各部材について算出してあります。これを用いて、各部材の力やたわみが、使用材料に対して与えられている許容値や部材に対して定められている制限値に対してどのくらいの割合にあるか(これを “負担率” と呼ぶこととします)を求めました。
柱について調査した結果、負担率が80%を越えるものがいくつかありましたが、それらはごく一部でした。また全体の80%は負担率が4割以下であることから、大部分は充分な余裕があることが分かりました(図1)。
主要な梁について調査した結果、梁の長さによって異なる特徴が見られました。例えば約2.3mの梁では、梁の中央付近に上階の柱や壁が載る場合があり、それによってせん断による力が許容値近くまで達することがありました。一方で約3.6mの梁ではたわみが制限値近くに達する傾向にありました。全体として見ると、その長さが1.3m以上のものでは、その69%は負担率が4割以下であることから、強度的な余裕は柱と同様に充分確保されていると言えます(図2)。
ところで、力には曲げ、引張、圧縮、せん断の種類があり、部材によってその一部または全部が加わります。今回の調査では、例えばある梁のそれぞれの力による負担率は曲げ:58、引張:0、圧縮:21、せん断:15(%)、およびたわみによる負担率は30(%)であったとします。この梁の例では曲げ強度が最も高い負担率を示すことから、最も重要な強度となります。従って、集成材のように材料構成を変えて各々の強度を設計できる材料では、主要な用途が分かれば重要な強度のみを強くするなど人為的にコントロールすることが可能です。これにより強度の低い材料も適材適所で有効に利用することが可能になります。本研究ではこのための詳細なデータが得られ、これらが集成材のJAS規格を改定する際の参考資料として用いられました。

本研究は交付金プロジェクト「スギ等地域材を用いた構造用新材料の開発と評価」による成果です。

詳しくは:青井秀樹 他(2007)第57回日本木材学会大会研究発表要旨集:PH015、PH016、青井秀樹 他(2008)第58回日本木材学会大会研究発表要旨集:PH011、PH012 をご覧下さい。
図表1 212707-1.gif
図表2 212707-2.gif
図表3 212707-3.gif
図表4 212707-4.gif
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