きのこ栽培の害菌類を調べる診断キットを開発

タイトル きのこ栽培の害菌類を調べる診断キットを開発
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 宮崎 和弘
奥田 徹
川端 良夫
新田 剛
発行年度 2008
要約 きのこ栽培施設に生息する菌を調べ、主な害菌の侵害力を検定し、害菌の特徴を簡便に検索出来る害菌防除に役立つ診断キットを開発しました。
背景・ねらい きのこの栽培を行っていると栽培したいきのこ以外の菌(いわゆる害菌類)が培地に混入し、きのこの発生量を減らしてしまうことがあります。被害がひどいときには、生産を断念せざるを得ない状況にまで追い込まれます。害菌類は、培地の放冷や接種作業、培養期間中に混入します。対策を施す上では、どの工程で害菌が培地に混入しているかを把握しておくことが重要になりますが、害菌の胞子や菌糸は小さく、その混入時期を特定することは容易ではありません。
そこで、害菌対策の助けとなるよう、栽培施設のどこに、どんな菌が生息し、その菌はどれくらいきのこを害する可能性があるのかといったことを簡便に判断できる診断キットの開発を試みました。
成果の内容・特徴

調査用培地の改良

施設内に生息する菌を調べる方法として、あらかじめ準備した培地を一定時間解放して、その培地の上で再生してくる菌を数えたり、何が生育してきたかを調べることで、害菌の生息密度や、種類を調べる落下菌調査という方法が用いられています。今回は、この方法で用いる調査用の培地を改良するため、培地に添加するローズベンガルの濃度を変えた実験を行い、害菌類の胞子発芽や、菌糸伸長速度への影響から、従来の50ppmよりも25ppmの方が適していることが分かりました。最終的には、表1に示した培地組成を調査用の培地として推奨することとしました。

対峙培養試験による害菌の強さの測定

害菌となる菌類にも様々な種類が存在し、その中にはきのこの菌糸を消化し自分の栄養としてしまう非常に侵害力の強いものから、逆にきのこの菌糸に被圧されてしまうような弱い菌まであります。そのため施設に生息している菌の侵害力を見分けることは、対策を行う必要があるかどうかを判断する上で重要な情報になります。そこで、きのこの菌糸と害菌の菌糸を対峙させて培養したときに、どのように反応するのか(図1)を対峙培養試験により観察し、それぞれの菌のきのこ菌糸に対する侵害力を評価しました。その結果の一部が表2です。強さを5段階に分け、表中の数値が高い方が、きのこの菌糸に対する侵害力が高いことを意味しており、菌の種類によって侵害力に違いがあることが分かります。

害菌検索システムの構築

先に述べた培地組成の培地上に生育した菌を簡易に同定し、その菌の侵害力データを検索できる害菌検索システムを構築しました。インターネットのウェブサイトなどで採用されているHTML形式で、害菌の成長速度や培養コロニーの外観、顕微鏡観察時の細胞の形態画像、前述した侵害力データなどの各種データが相互に検索できるようになっており、主な害菌の同定を簡単に行えるようになりました(図2)。
今後さらにデータの種類や対象とする害菌の種類数を増やし、よりよいシステムに仕上げていく予定です。

本研究は、農林水産省の先端技術を活用した農林水産研究高度化事業「診断キットを用いたきのこ栽培の害菌被害回避法の開発」の成果です。

詳しくは、宮崎和弘・山下和久・川端良夫・新田 剛(2006) 九州森林研究, 59:275-276、等の関連業績をご覧下さい。
図表1 212714-1.gif
図表2 212714-2.jpg
図表3 212714-3.gif
図表4 212714-4.jpg
カテゴリ 病害虫 防除

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