| タイトル | ポプラの環境ストレス応答性遺伝子の網羅的発現解析 |
|---|---|
| 担当機関 | (独)森林総合研究所 |
| 研究期間 | |
| 研究担当者 |
楠城 時彦 西口 満 篠原 健司 |
| 発行年度 | 2009 |
| 要約 | DNAマイクロアレイを用いて、ポプラの環境ストレス応答性遺伝子を2,214種類同定しました。これらの遺伝子群は、環境保全に貢献する高環境ストレス耐性遺伝子組換え樹木の開発に役立ちます。 |
| 背景・ねらい | 樹木の環境ストレス応答機構や耐性機構の解明は、持続的な環境保全を考える上で大変重要な課題です。本研究では、乾燥、高塩濃度や低温等の環境ストレスに対する樹木の分子応答機構を解析するために、DNAマイクロアレイによるポプラ遺伝子の網羅的発現解析を行いました。DNAマイクロアレイを使うと、数万種から数十万種におよぶ遺伝子の発現を一回の実験で解析することができます。本研究では、ポプラのDNAマイクロアレイを使って、環境ストレスを加えた時に発現が変動する遺伝子を2千種類以上同定しました。それらの遺伝子群には、高環境ストレス耐性組換え樹木の作出への応用が期待される有用遺伝子候補が多数含まれていました。 |
| 成果の内容・特徴 | DNAマイクロアレイによる遺伝子発現*の網羅的解析DNAマイクロアレイは、ガラスやプラスチックなどの基板の上に多数のDNA断片や合成オリゴヌクレオチドを貼り付けた実験器具で、DNAチップとも呼ばれます。DNAマイクロアレイを使うと、数万種から数十万種におよぶ遺伝子の発現を一回の実験で解析することができます。本研究では、ポプラゲノム上にある遺伝子のほとんどすべてを搭載したDNAマイクロアレイを用いました。ポプラ(セイヨウハコヤナギ、Populus nigra var. italica)の葉に、乾燥、高塩濃度、低温やアブシジン酸(ABA)のストレス処理(0、2、10時間)を加えました。ストレス処理前と処理後の本葉から抽出したRNAをDNAマイクロアレイと反応させることにより、ストレスに応答して発現が変化する遺伝子を解析しました。 ポプラのストレス応答性遺伝子の特定乾燥、高塩濃度、低温及びアブシジン酸いずれかの処理によって、発現が有意に変動する遺伝子を2,214種同定しました。それらのうち、ストレスにより発現レベルが上昇するものが1,382種、発現レベルが下降するものが843種でした(図1)。また、同一のストレス処理でも処理時間(2、10時間)により発現変動の上昇と下降が逆転するものが11種ありました。特に、ストレスによって発現レベルが上昇する、つまりストレス時に積極的にタンパク質を合成する遺伝子の中には、オリゴ糖やアミノ酸の合成酵素遺伝子、転写因子やプロテインキナーゼなどストレスシグナルの伝達に関わる遺伝子などが含まれていました(表1)。これらの遺伝子は、いずれも樹木の環境ストレス応答に深く関わっている可能性があります。本研究で得られた成果は、樹木の環境ストレス応答機構解明の足がかりとなるだけでなく、樹木独自のストレス誘導性プロモーターの開発、環境ストレス耐性遺伝子組換え樹木の開発、さらに耐性品種のDNA選抜マーカーの開発にも役立ちます。 本研究は、森林総合研究所交付金プロジェクト「ポプラ等樹木の完全長cDNA塩基配列情報の充実」により、(独)理化学研究所植物科学研究センターとの共同研究として推進しました。 *遺伝子発現;遺伝子発現とは、DNAの情報がmRNAに転写され、さらにmRNAの情報をもとにタンパク質が合成されるまでの一連の過程を意味する場合と、DNAからmRNAへの転写段階のみを指す場合がある。本稿では、後者すなわち遺伝子発現という語彙を狭義で用いている。また本研究では、DNAマイクロアレイ解析の結果、ストレス処理前後の発現比(ストレス処理後/ストレス処理前)が1より大きかったものを「ストレスに応答して発現が上昇した」、1より小さかったものを「ストレスに応答して発現が下降した」とそれぞれ定義している。 |
| 図表1 | ![]() |
| 図表2 | ![]() |
| カテゴリ | 乾燥 品種 |
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