木材の中のDNAはどこに多く残っているのか?

タイトル 木材の中のDNAはどこに多く残っているのか?
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 安部 久
黒田 克史
張 春花
吉田 和正
渡辺 宇外
発行年度 2009
要約 木材からのDNA抽出効率は心材化や伐採後の時間の経過に伴って低下します。しかし、長期間保存された木材中にもDNAが残存していることがわかり、木材製品の樹種の識別にDNA分析が適用できる可能性を示しました。
背景・ねらい 木材を将来にわたって持続的に利用するためには、伐採する量を適正に維持する必要があります。そのように管理された森林から生産された木材の利用を促進するには、木材製品に樹種や産地を表示することが効果的ですが、その信頼性を保つためには表示内容の正しさを科学的に証明する方法が不可欠です。
樹種や産地の確認には、DNA分析手法の適用が有効です。しかし、木材中のDNAの量は他の植物と比べて少なく、さらに、伐採後、木材が利用される過程で乾燥などの影響を受けてDNAの分解・変質が進みます。本研究では、木材製品へ適用するDNA分析法の改良に役立てるため、伐採後の年数経過に伴うDNA量と木材中のDNAの分布の変化を調べました。
成果の内容・特徴

木材中のDNA量の変化

試料として、伐採後すぐの新鮮なスギの木材と、森林総合研究所の木材標本庫に、1、11、23、40および75年間保管されたスギ木材の標本を用いました。各木材試料を粉砕した後、市販のキットを用いてDNAを抽出し、その量を調べました。伐採後すぐの新鮮な試料から得られたDNAは辺材*で最も多く、移行材*、心材* 順に少なくなり、心材では部位による抽出量の違いはありませんでした(図1)。一方、保存された木材から抽出されたDNAの量はどの保存年数のものについても検出限界以下でしたが、保存年数23年までの辺材と11年までの心材の抽出液からはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法*によって葉緑体の遺伝子を増幅でき、木材中にDNAが残存していることが確認できました(図2)。辺材では、保存期間が長くなるとDNA量が減少すること、心材においては同じ期間保存された木材の辺材よりもDNAが少ないことがわかりました。これらのことから、木材からのDNA抽出効率は木材が心材になることで低下しますが、保存中にも木材の乾燥等に伴う柔細胞*の死によって低下することが明らかになりました。

木材中のDNAの分布

DNAと結合して蛍光を発する試薬を使い、DNAが木材中のどこに存在しているかを調べました。新鮮な試料の辺材では、柔細胞の核と、葉緑体と同じ起源のデンプンを貯めるための細胞内の小器官であるアミロプラストにDNAが存在していました(図3辺材)。心材では、褐色の物質が沈着し、どの細胞についても核のDNAは見られませんでした(図3心材)。一方、保存された木材の辺材では、特に早材(一年輪のうちで春に形成される部分)において核にDNAが認められる柔細胞の数は減少し、かわって、褐色の物質の沈着が多く見られました(図4)。心材においては褐色の物質が多く、核のDNAは観察されませんでした。これらのことから、長期間保存された木材では細胞中に着色物質が沈着するものの、細胞レベルで見ると柔細胞にDNAが残存している核や細胞小器官が残っていることがわかり、木材のDNAによる分析が可能であると考えられました。
以上の知見をもとに、今後は保存された木材さらには木材製品の樹種や産地識別に適用できる効率的なDNA抽出手法を開発する予定です。

本研究は、森林総合研究所交付金プロジェクト「合法性・持続可能性木材の証明のための樹種・産地特定技術の開発」および文部科学省科学研究費補助金「マイクロマニュピレーション・直接PCR法を用いたDNA分析による木材の樹種識別」による成果です。

*ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法;DNAの特定部位の両端に結合する1組のDNA断片とDNA合成酵素を用いて特定部位のDNAを人工的に増幅する方法。PCRはPolymerase Chain Reactionの略。
*辺材・心材・移行材;木材の断面における、外側の部分(辺材)と内側の濃色の部分(心材)、およびその間に存在する部分(移行材)(図1参照)
*柔細胞;木材中で養分の貯蔵や運搬・代謝を行っている細胞。一般に木材体積の5~15%程度を占めるが、心材では死んでいる。
図表1 212749-1.jpg
図表2 212749-2.jpg
図表3 212749-3.jpg
図表4 212749-4.jpg
カテゴリ 乾燥

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