タイトル | 橙色キンセンカの花色発現に関わるカロテノイド組成 |
---|---|
担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 花き研究所 |
研究期間 | 2004~2004 |
研究担当者 |
岸本早苗 大宮あけみ 住友克彦 |
発行年度 | 2004 |
要約 | 橙色キンセンカには黄色花弁には含まれていない赤みを帯びた10種のカロテノイドが存在し、そのうち6種は5位もしくは5(位にシス構造を持っている。また、これらのうち、5種はこれまでに天然物として報告されていない新規カロテノイドである。 |
キーワード | キンセンカ、カロテノイド |
背景・ねらい | 橙色系のキク花弁ではアントシアニンとカロテノイドの重なりによって橙色を発現しているが、明度が低く不鮮明なのが欠点である。一方、同じキク科に属しているキンセンカはカロテノイドのみで構成される鮮明な橙色花色を有する。そこで、キンセンカの橙色品種と黄色品種のカロテノイド成分を比較・決定し、キクのカロテノイド生合成系に関わる遺伝子組換えによる新花色の作出に役立てる。 |
成果の内容・特徴 | 1. 橙色品種と黄色品種(図1)の花弁のカロテノイド抽出液のHPLCクロマトグラムを比較すると、橙色品種には黄色品種で検出されるカロテノイド9種類に加えて橙色品種に特有である10種類のカロテノイドが存在する(図2)。 2. これら橙色品種に特有なカロテノイドはいずれもキンセンカの主要カロテノイドであるフラボキサンチンより吸収スペクトルの極大値が25~50 nm長波長側にあり、赤みを帯びている。 3. 橙色品種に特有な10種類のカロテノイドの構造をNMR分析にて決定したところ、このうち6種類は5位もしくは5'位にシス構造を持っている(表1、図3)。橙色品種ではカロテノイドの5位もしくは5'位が異性化されシス構造を取ることによって末端の環化が阻害され、赤みを帯びたリコペン類や環を1つしか持たないカロテン類が蓄積するものと考えられる。 4. (5'Z )-γ-carotene, (5'Z, 9'Z )-rubixanthin, (5Z, 9Z )-lycopene, (5Z, 9Z, 5'Z )-lycopene, (5Z, 9Z, 5'Z, 9'Z )-lycopene(図3)の5種は天然物として新規のカロテノイドである。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 橙色品種にのみ5位もしくは5'位を異性化する酵素が存在すると考えられる。この反応に関与する遺伝子を単離することができれば、遺伝子組換えによって花弁に赤みを帯びたリコペン類を特異的に蓄積させ、キンセンカのように鮮やかな橙色の花色を持つキクを作出できる可能性がある。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | きく きんせんか 品種 |