カンキツトリステザウイルスに対する免疫性の付与に有効なカンキツ中間母本候補「RP−35」及び「RP−94」

タイトル カンキツトリステザウイルスに対する免疫性の付与に有効なカンキツ中間母本候補「RP−35」及び「RP−94」
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 果樹研究所
研究期間 1994~2003
研究担当者 吉田俊雄
根角博久
中野睦子
吉岡照高
中嶋直子
國賀 武
瀧下文孝
発行年度 2003
要約 カンキツ属とカラタチ属の属間雑種「H・FD-1」と「晩白柚」との雑種であるブンタンタイプの「RP-35」と、「清見」と「H・FD-1」の雑種であるタンゴールタイプの「RP-94」はカンキツトリステザウイルス(CTV)に免疫性である。単胚性のため交雑実生の獲得が容易でCTV免疫性の新品種育成に有効な中間母本である。
キーワード カンキツ、中間母本、CTV免疫性、属間雑種、ブンタン、タンゴール
背景・ねらい
カンキツ属近縁植物のカラタチはCTVに対し免疫性であるが、独特の臭気と強い酸味のために食用にならない。そこで、果実品質が良くCTV免疫性の中間母本を作出する。
成果の内容・特徴
1.
「RP-35」は1994年(平成6年)に果樹試験場興津支場(現 果樹研究所カンキツ研究部興津)おいて、CTV免疫性の属間雑種「H・FD-1」(「ハッサク」×「ヒリュウ」)に大果で酸含量が比較的少ない「晩白柚」を交雑して育成した雑種である。「RP-94」は同年に、雄性不稔性で果実品質が良好な「清見」に「H・FD-1」を交雑して育成した雑種である。
2.
「RP-35」は樹勢が強くやや直立性で、かいよう病にはやや罹病性である。花粉稔性率が90%以上あり高い。結実性は良好である。果実は 350g位で球形、小型のブンタンタイプである。果皮は黄色で厚さ12mm程度、11月中旬頃に完全着色する。果肉は黄白色で比較的軟かい。果皮、果肉、果汁ともにほとんどカラタチ臭が無い。果汁のクエン酸含量は3%程度あり酸味が強い。苦味は無い。含核数は平均40粒程度で、種子は単胚性である。成熟期は1月上旬頃と考えられる(表1、図1)。
3.
「RP-94」は樹勢中庸で開張性である。かいよう病にはやや罹病性である。やくが退化して花粉は無い。着花性、結実性は良好である。果実は約 170gで扁球形。果皮は黄橙色で厚さ約3mm、剥皮しにくい。12月下旬頃完全着色する。果肉は黄橙色で比較的軟かい。果皮、果肉、果汁ともにほとんどカラタチ臭が無い。果汁のクエン酸含量は4~5%あり酸味が強い。成熟期は1月上旬頃と考えられる(表1、図2)。袋掛けをして花粉を遮断した花の着果率は50%以上と高く、いずれの果実も無核で単為結果性が強い。自然受粉では平均3粒程度の種子が入る。種子は単胚性である。
4.
CTVを保毒する「今村温州」に高接ぎした「RP-35」と「RP-94」の樹について、高接ぎから90か月後までのエライザ検定でCTVの感染は確認されていない(表2)。また、ラフレモン台の接ぎ木苗を養成し、4種類のCTV分離株をそれぞれ台木部に接ぎ木接種した結果、「RP-94」では接種から57か月の間の7回の検定でいずれの分離株についても検出されていない(表3)。また、「RP-35」でも接種から13か月の間の2回の検定でいずれの分離株についても検出されていない。
成果の活用面・留意点 1.
カラタチの持つCTV免疫性は感受性に対して優性に遺伝する。両系統はCTV免疫性品種育成のための母本として有用である。
2.
「RP-94」は雄性不稔性で花粉が無いので、種子親としてのみ利用ができる。
図表1 213092-1.jpg
図表2 213092-2.jpg
図表3 213092-3.jpg
図表4 213092-4.jpg
図表5 213092-5.jpg
カテゴリ 受粉 新品種育成 台木 高接ぎ 単為結果 接ぎ木 はっさく 品種 ぶんたん レモン その他のかんきつ

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