タイトル | ブドウ「巨峰」のアグロバクテリウム法による形質転換 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 果樹研究所 |
研究期間 | 2001~2005 |
研究担当者 |
中島育子 松田長生 小林省藏 山本俊哉 副島淳一 |
発行年度 | 2003 |
要約 | 形質転換体の作出が困難なブドウの基幹品種「巨峰」のエンブリオジェニックカルスにGFP遺伝子を持つアグロバクテリウムを感染させ、GFP蛍光のある形質転換体が獲得できる。 |
キーワード | 巨峰、アグロバクテリウム、エンブリオジェニックカルス、GFP |
背景・ねらい | 「巨峰」は我が国において最も広く栽培されているブドウ品種であり、多くの品種の交雑親としても用いられている。しかし、「巨峰」の栽培では、花振るい性、着色の不安定性、収穫後の脱粒による日持ちの悪さ、耐病虫性の不足などが問題としてあげられ、改善が求められている。ブドウの品種改良は通常交雑育種により行われるが、近年、多くの作物で遺伝子組換え技術を用いた育種が進展している。我が国では「甲州三尺」や「ネオ・マスカット」などいくつかの品種で形質転換体の作出が報告されているが、基幹品種である「巨峰」では困難とされ、これまで報告がない。そこで我々は「巨峰」におけるアグロバクテリウム法による形質転換技術確立を目的として、「巨峰」のエンブリオジェニックカルス(EC)に緑色蛍光を発するオワンクラゲのGFP遺伝子の導入を試みた。 |
成果の内容・特徴 | 1. アグロバクテリウムの感染には、1/2MSあるいはNNに1μMの2,4-Dを添加した培地で継代維持している「巨峰」未受精胚珠由来のECを用いる。 2. アグロバクテリウムはEHA105を用いる。アグロバクテリウムとECを100μMアセトシリンゴン含有1/2MS培地(5%マルトース、0.85%寒天)上で、26℃暗黒下、6日間共存培養させ、感染を促す。 3. アグロバクテリウムを感染させたECは、200μg/mlクラホランと15μg/mlカナマイシンを含む1/2MS培地(0.85%寒天)に2週間、寒天濃度が3%の同培地に1ヶ月置き、その後、選抜培地のカナマイシン濃度を15μg/mlとして、4ヶ月間形質転換体の選抜を行う。 4. 選抜培地でもやし状に伸長したGFP蛍光のある不定胚は、ゼアチン5μMを含んだ1/2MS培地(1%寒天)へ移植して本葉の展開を促すと、GFP蛍光を発する「巨峰」形質転換体が得られる(表1、図1)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 「巨峰」の形質転換が可能となったため、今後この方法を用いて、耐病性遺伝子などの有用遺伝子を「巨峰」に導入することが可能である。 2. 「巨峰」を交雑親に持つ品種、あるいは形質転換体獲得が困難な欧米雑種について、今後この方法を応用し、形質転換体獲得技術を確立する必要がある。 |
図表1 | |
図表2 | |
カテゴリ | 育種 品種 品種改良 ぶどう もやし りんご |