タイトル | ウメ干しの仁中微量元素組成による日本産と中国産の判別法 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 果樹研究所 |
研究期間 | 2002~2004 |
研究担当者 |
井上博道 中村ゆり 梅宮善章 |
発行年度 | 2005 |
要約 | ウメ干し種子の仁中微量元素濃度組成の多変量解析から、日本産と中国産には顕著な特徴が認められる。ストロンチウム濃度による簡易基準、あるいは9元素による判定で、輸入原料のほとんどを占める中国産を日本産と高い的中率で判別することができる。 |
キーワード | ウメ、産地判別、微量元素、判別分析、主成分分析、ICP発光分析 |
背景・ねらい | 中国から日本産に匹敵する量の塩蔵ウメが輸入されており、その価格差が大きいことから産地表示の偽装が懸念されている。この表示の適切性の判定には、科学的根拠に基づいた判別手法が必要となる。コメ、チャ、ネギ等では元素組成による産地判別が検討されている。そこで、ウメの微量元素組成から産地を判別する手法を開発する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 塩蔵による元素変動が少ないウメ干し種子の仁を取りだし、硝酸で分解後、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置で多元素を同時に定量することにより、比較的簡便にウメ1粒ごとの産地を判別できる。市販の混合標準液(23元素)を用い、微量元素のうちウメ仁中で安定して測定可能な9元素(Zn,Fe,Mn,Cu,Sr,Ba,Ni,Co,Cr)で判別を行う。 2. 日本産(98サンプル)と中国産(88サンプル)のウメ干し仁中のストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)濃度の中央値には約10倍の差があり(図1)、Sr濃度8.0 mg kg-1を簡易基準とすると、全体の93.2%が正しく判別できる。 3. 上記9元素を用いた多変量解析の主成分分析により日本産と中国産は分離し(図2)、線形判別分析の結果(図3)、判別的中率は93.2%である。KNN(K-Nearest Neighbor)法を用いることにより(図4)、さらに的中率が94.3%に向上する。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 食品表示のチェックを行っている行政機関等で利用できる。 2. Sr濃度が高いことによる日本産の誤判別が懸念されるが、その場合栽培された土壌を分析することにより産地は確認できる。 3. 中国産のサンプルは、現時点で輸入されているものを用いており、産地あるいは品種が変わる場合、判別基準の見直しを検討する必要がある。 4. 中国産のネギ、ブロッコリーでは日本産のものよりSr濃度が高いとの報告があり、日本への輸入農産物が多く作られている中国内の産地の土壌には、作物に吸収されやすい形態でSrが多く含まれていることが予想できる。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | うめ ねぎ 品種 ブロッコリー |