タイトル |
機能性成分を高濃度含有する早生のミカン新品種「西南のひかり」 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 |
研究期間 |
1988~2006 |
研究担当者 |
高原利雄
深町 浩
今井 篤
野中圭介
松本亮司
吉岡照高
國賀 武
奥代直巳
山本雅史
三谷宣仁
稗圃直史
吉永勝一
内原 茂
山田彬雄
池宮秀和
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発行年度 |
2006 |
要約 |
カンキツ新品種候補「西南のひかり」は「(アンコール・興津早生)No.21」に「陽香」を交雑して育成した早生のミカンである。年内に成熟し、剥皮容易でじょうのう膜が薄く、少核性で食べやすいうえ、果肉は柔軟・多汁であり、高糖度で食味が良い。特に機能性成分であるβ-クリプトキサンチンを高濃度含有する。
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キーワード |
カンキツ、ミカン、新品種、早生、良食味
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背景・ねらい |
年内に収穫されるカンキツはウンシュウミカンがほとんどであるが、ウンシュウミカンは園地条件等により低糖度の果実が生産されやすい。そのため年内に成熟する高糖度で食味の良い品種の育成が求められている。そこで中生であり、剥皮容易で良食味、雄性不稔性かつ単胚性である「(アンコール・興津早生)No.21」を種子親に、中生で大果・高糖度かつ良食味の「陽香」を花粉親にして交雑を行い、早生で、食べやすく、高糖度で食味が良い、剥皮良好なミカンタイプの品種育成を図る。
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成果の内容・特徴 |
- 1988年(昭和63年)に果樹試験場口之津支場(現果樹研究所カンキツ研究口之津拠点)において「(アンコール・興津早生)No.21」に「陽香」を交雑して育成した品種である。1991年(平成3年)にウンシュウミカンに高接ぎ、1995年(平成7年)に初結実し、選抜した。1996年(平成8年)4月からカンキツ第8回系統適応性・特性検定試験を実施し、新品種候補にふさわしいとの結論が得られた。
- 果実は平均180g程度、果形は扁円形で果形指数は140程度である。果皮は橙色~濃橙色、厚さ約2.5mmで薄くて軟らかく、剥皮は容易である。果面はやや滑らかで11月下旬に完全着色する。果肉は濃橙色で、肉質は軟らかく果汁量は多い。じょうのう膜は比較的薄く食べやすい。果汁の糖度は約13%で高く、減酸は早い。オレンジとアンコールを混合した芳香があり食味が良好である。成熟期は12月上中旬である。花粉量は極めて少なく、他品種の花粉が受粉されなければ無核果も生産される(表1、図1)。果肉には機能性成分として注目されるβ-クリプトキサンチンを高濃度含有する(表2)。
- 樹勢はやや弱く、樹姿は直立性と開張性の中間である。枝梢の長さ、太さは中位で、密生する。葉はやや小さい。とげの発生がみられるが、樹勢が落ち着けば発生しなくなるものと思われる。結実性は比較的良好であるが、隔年結果性がやや高い。そうか病には強く、かいよう病に対しては中程度の抵抗性を持つ。カンキツトリステザウイルスによるステムピッティングの発生は中程度である。
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成果の活用面・留意点 |
- 年内に成熟するため、わが国のほとんどのカンキツ栽培地帯に適する。
- 樹勢がやや弱いため、耕土の浅い地域を避け、適切な肥培管理と適正着果等に留意して樹勢の維持・強化を図る必要がある。
- 現在、加齢促進(エイジング処理)による無とげ化を実施中であり、とげはほとんどなくなってきている。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
温州みかん
機能性成分
受粉
新品種
高接ぎ
抵抗性
肥培管理
品種
良食味
その他のかんきつ
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