タイトル |
施設栽培に最適なミカン新品種「津之輝」 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 |
研究期間 |
1984~2006 |
研究担当者 |
高原利雄
深町 浩
今井 篤
野中圭介
松本亮司
吉岡照高
國賀 武
奥代直巳
山本雅史
三谷宣仁
稗圃直史
吉永勝一
内原 茂
山田彬雄
池宮秀和
浅田謙介
村田広野
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発行年度 |
2006 |
要約 |
カンキツ新品種候補「津之輝」は「(清見・興津早生)No.14」に「アンコール」を交雑して育成したミカンである。剥皮は比較的容易で、じょうのう膜が薄く、無核性で食べやすい。糖度が高く食味良好で、施設栽培で特に高品質果実が生産される。
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キーワード |
カンキツ、ミカン、新品種、良食味、施設栽培
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背景・ねらい |
ウンシュウミカンの生産に片寄るわが国のカンキツの品種構成を改善し、消費者の嗜好の変化に対応する特徴のある多様な品種の育成が望まれている。そこで、中生で、良食味、雄性不稔タイプの無核性かつ単胚性である「(清見・興津早生)No.14」を種子親に、中生で有核であるが高糖度・良食味かつ施設栽培に適する「アンコール」を花粉親に交雑を行い、糖度が高く、食味の良い、無核性で施設栽培に適する、剥皮良好なミカンタイプの品種育成を図る。
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成果の内容・特徴 |
- 1984年(昭和59年)に果樹試験場口之津支場(現果樹研究所カンキツ研究口之津拠点)において「(清見・興津早生)No.14」に「アンコール」を交雑して育成した品種である。1986年(昭和61年)にウンシュウミカンに高接ぎ、1989年(平成元年)に初結実し、一次選抜した。2001年(平成13年)4月よりカンキツ第9回系統適応性・特性検定試験を実施し、新品種候補にふさわしいとの結論が得られた。
- 果実は扁球形で平均180g位、果皮は濃橙色でやや赤味があり、厚さ約3.0mmで剥皮は比較的容易である。果面は光沢があり油胞はやや突出する。浮き皮は発生しない。果肉は濃橙色で、じょうのう膜は薄くて食べやすく、肉質は軟らかく多汁性である。成熟期は露地栽培で1月中旬~2月上旬、年間使用燃料が5kl/10a以下の少加温ハウス栽培では12月上旬である。果汁の糖度は約13%と高く、減酸は比較的容易で、アンコールに似た香りがあり食味良好である。種子は単胚性。雄性不稔性を有し、他品種の花粉が受粉されなければ無核果となる(表1、図1)。果肉には機能性成分として注目されるβ-クリプトキサンチンを高濃度含有する(表2)。施設栽培では250g前後の大果となり、赤味のある濃橙色で美麗な外観で、食味の良い果実が生産される。
- 樹勢は中庸で、樹姿はやや直立する。枝梢の長さ、太さは中位で、密生する。短いとげの発生が少しみられるが、樹勢が落ち着けば発生しない。結実性は中位で、気象条件により裂果の発生がみられ、隔年結果性は中位である。そうか病には強く、かいよう病にはかなり強い。カンキツトリステザウイルスによるステムピッティングの発生は軽度である。
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成果の活用面・留意点 |
- 施設栽培では果頂部のへその部分が突出する「へそ果」が発生しやすいため、摘果の際、果頂部の突出した果実を優先的に摘果する。樹が落ち着けば「へそ果」の発生は減少する。
- 果実肥大期の過乾燥により裂果が発生しやすいため、適正着果に留意し果実肥大期の極端な乾燥を避ける。
- 雄性不稔性であるが、無核果、少核果を得るためには、周囲の園地に花粉を形成する品種が植栽されていないことが望ましい。施設栽培では無核となる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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カテゴリ |
温州みかん
乾燥
機能性成分
施設栽培
受粉
新品種
高接ぎ
品種
良食味
その他のかんきつ
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