環境会計手法を用いた共同利用型バイオガスシステムの温暖化負荷削減効果

タイトル 環境会計手法を用いた共同利用型バイオガスシステムの温暖化負荷削減効果
担当機関 根釧農試
研究期間 2001~2004
研究担当者 岡田直樹
日向貴久
発行年度 2004
要約 複数の酪農家が共同で利用する経産牛1000頭規模の共同利用型バイオガスプラントは、プラント導入前の処理システムに比べて52%の温暖化負荷削減が期待できる。
キーワード ふん尿処理、共同利用型バイオガスプラント、温暖化負荷、環境評価、LCA
背景・ねらい バイオガスプラントによるふん尿処理は、高い温暖化負荷を持つCH4を放出しないことから温暖化防止に貢献する技術と言われている。環境問題の中でも温暖化は、炭素税や排出権取引など具体的な政策による対応が国際的に最も進んでおり、わが国でもそのための対応が早急に求められている。本研究では共同利用型バイオガスプラントで発生する温暖化負荷を、環境会計手法の1つであるLCAを用いて評価し、その導入効果を定量的に示す。
成果の内容・特徴
  1. 別海町にある試験研究用共同利用型バイオガスプラントは、10戸の農家が参加しており経産牛換算でおよそ1000頭分のふん尿を処理している。そこで温暖化ガスを対象にしたライフサイクルフロー(図1)を作成し、1年間のふん尿処理に伴って発生する温暖化負荷をLCAを用いて定量化したところ、およそ447t-CO2eq(表1左)となった。これは、プラント体制導入以前(堆肥処理・スラリー処理)の個別処理(表1右)に比べて45%の温暖化負荷削減効果があると考えられる。
  2. 作業過程別に見ると(図2)、共同利用型に見られるふん尿の大規模な搬出入は、ふん尿処理全体の中で温暖化に与える影響は低く、当プラントに特有の堆積発酵過程が最大の負荷発生源とわかる。従って共同利用型バイオガスプラントでは、搬入されたふん尿を可能な限りメタン発酵に供することが温暖化負荷削減に効果的と判断される。そのためにはプラントに破砕機を設置し、発酵槽への長ワラの混入を防止することや、敷料に使うワラ・麦稈の細断の徹底、距離が離れていても参加農家をスラリー処理形態のみに限定するなどハード、ソフト両面からの誘導が必要である。
    また、貯留槽を密閉構造にするなどして、貯留時揮散を抑制する施設を整備することも有効と考えられる。
  3. 以上の結果を踏まえ一般化するため、参加農家が全てスラリー処理であること、経産牛1,000頭規模の条件の下に共同利用型バイオガスプラントのモデルを組みLCAを行なった結果(表2左)、このモデルの共同利用型バイオガスプラントは、1年間のふん尿処理で326t-CO2eq、スラリー1tに対して13.7kg-CO2eqの温暖化負荷の放出があることが推定された。
  4. 比較対象として、個別型スラリー処理の経産牛100頭規模農家10戸分のふん尿処理を想定しLCAを行なった結果(表2右)、同683t-CO2eq、スラリー1tに対して28.8kg-CO2eqとなり、モデル化した共同利用型プラントは運転時にスラリー処理の場合の52%の温暖化削減効果があると計算された。
成果の活用面・留意点
  1. 環境保全を目的として共同利用型バイオガスプラント建設を計画する自治体や農協、農業者集団等が、建設に関わる意思決定をする際の資料として活用できる。
平成16年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名及び区分
「環境会計手法(LCA)を用いた家畜ふん尿用バイオガスシステムの評価」(指導参考)
図表1 213435-1.jpg
カテゴリ 乳牛 評価法

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