水稲有機農業の労働時間・費用の特徴と経済的な収量水準

タイトル 水稲有機農業の労働時間・費用の特徴と経済的な収量水準
担当機関 北海道立中央農業試験場
研究期間 2004~2005
研究担当者 白井康裕
発行年度 2005
要約 水稲有機農業の費用は、慣行栽培の1.5倍を要す。一方、販売価格は通常の1.3~1.7倍である。水稲の有機農業に取り組む際には、最低でも420kg/10a以上(価格15,000円/60kg)を実現し、物財費と雇用労賃を補填する必要がある。
キーワード 有機農業、費用、労働時間、損益分岐点
背景・ねらい
消費者の安全志向の高まりを背景に、有機農業を試みる経営が、本道においても増加することが予想される。そのため、4戸の先進事例の調査・分析から、水稲有機農業の労働時間と費用の特徴を明らかにし、その成立に必要となる経済的な収量を明らかにする。

成果の内容・特徴 1.水稲有機農業の投下労働時間を整理した結果、除草に要した労働時間は、慣行栽培の10倍以上に増加していた(表1)。加えて、作業機の洗浄を実施することや肥料の散布量が多いことから、耕起・整地作業や施肥作業においても通常よりも労働時間が増加する傾向が認められた。なお、ぼかし肥料をはじめとした自給資材を用いるD経営では、間接労働時間が著しく増加していた。
2.水稲有機農業の生産費を整理した結果、肥料費は、資材価格の高い有機質肥料を用いるため、2~3倍割高であった。農業薬剤費は、化学合成農薬を使用しないため、低下していた。諸材料費は、高価な認定資材を用いる場面が多く、割高になる傾向にあった。また、JAS認定に伴う費用や栽培講習等に出席する機会が多いことから、間接的な経費である公課諸負担や生産管理費も高かった。労働費は、除草作業を始めとした労働時間の増加に伴い、大幅に上昇していた。以上を反映して、有機農業の生産費は通常の水準を1.5倍程度上回っていた(表2)。
3.A、B経営では、有機米の出荷組合を組織しており、販路を独自に開拓していた。ここでは、販売価格は慣行米の水準よりも高く、集出荷経費も低下していた。一方、C、D経営では、農協を中心に産地として販路を独自に開拓しており、販売価格は慣行米の水準よりも高く、集出荷経費も農協における手数料の負担軽減等の支援措置により低下していた(表3)。
4.C経営をモデルに損益分岐点となる収量水準を求めたところ、現状の価格水準(25,000円/60kg)では、6俵/10a以上(360kg/10a以上)の収量を確保できると、家族労賃を含む生産費を補填することが可能になる(表4、式1)。また、慣行米の価格水準に近い15,000円/60kgでは、6.9俵/10a以上(415kg/10a以上)の収量を確保しないと、物財費と雇用労賃を購えないことが判明した。そのため、水稲の有機農業に取り組む際には、価格15,000円/60kgを考慮して最低でも7俵/10a以上(420kg/10a以上)を実現し、物財費と雇用労賃を補填するとともに、所得形成に向けて更なる販売価格と収量の向上に努める必要がある。

成果の活用面・留意点
1.新たに水稲の有機農業に取り組む場面で参考にする。

平成17年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「水稲有機農業の経済的な成立条件」(指導参考)
図表1 213557-1.jpg
図表2 213557-2.jpg
図表3 213557-3.jpg
図表4 213557-4.jpg
カテゴリ 有機農業 有機栽培 土づくり 肥料 病害虫 経営管理 出荷調整 除草 水稲 施肥 農薬 薬剤

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