草地に表面施用された重窒素標識スラリーおよび堆肥の窒素動態

タイトル 草地に表面施用された重窒素標識スラリーおよび堆肥の窒素動態
担当機関 北海道立根釧農業試験場
研究期間 1999~2003
研究担当者 三枝俊哉
松本武彦
酒井治
三木直倫
寳示戸雅之
発行年度 2005
要約 スラリー由来の窒素は施用当年に多く吸収され、堆肥よりも3年間に収穫物として持ち出される割合が高く、土壌に残存する割合が低い。堆肥由来の窒素は土壌に多く残存するが、牧草は土壌由来窒素をより多く利用する。揮散、溶脱等を含む行方不明窒素の割合にはスラリーと堆肥で差がない。
キーワード 重窒素、スラリー、草地、堆肥、表面施用
背景・ねらい
北海道では、草地における環境に配慮した適正なふん尿利用を推進するため、道内各地でふん尿の施用試験を展開し、ふん尿肥効評価を精密化し、施用時期・施用量の指針を策定した。しかし、これらの試験では、ふん尿の肥効をふん尿施用区と無施用区の窒素吸収量の差(差引法)によって推定しており、ふん尿窒素の動態は明らかになっていない。また、スラリー、堆肥の適正施用条件における環境負荷を測定した事例も少ない。そこで、重窒素で標識したスラリーと堆肥を草地に表面施用し、3年間の窒素の動態を明らかにする。

成果の内容・特徴 1.重窒素標識スラリー(全窒素0.23%、重窒素3.16atom%)を現物40t/ha表面施用すると、牧草体の重窒素割合は施用当年に著しく高まり、以後急激に低下するが、3年目まで自然存在比よりも高い水準を維持する。一方、堆肥(全窒素0.38%、重窒素2.55atom%)では、スラリー施用時のような急激な上昇は認められず、自然存在比よりも高い重窒素割合が3年間持続する (図1)。したがって、いずれの資材施用時にも、4年目以降への肥効の持続が期待される。
2.表面施用3年目2番草収穫後の重窒素割合は、牧草体の刈り株・根と0-2cm土壌、すなわち草地表層で高まり、その程度は堆肥施用の場合に顕著である(図2)。
3.同位体トレーサー法によって求めた地上部窒素吸収量に占めるふん尿由来窒素の割合は、スラリーの場合、施用当年に9-17%と高まり、以後急激に低下する。これに対し、堆肥では3年間を通じて2-6%と低いが、経年的な低下はみられない。このように、堆肥施用時の牧草は、ふん尿由来窒素の利用がスラリーよりも少ないことから、土壌由来の窒素をより多く利用する(表1)。
4.差引法の結果と合わせた全体の収支を見ると、化学肥料と併用されたスラリー由来の窒素は、3年間で23%が収穫物によって持ち出され、53%が土壌に残存する。一方、堆肥由来の窒素は、収穫物によって持ち出される割合が10%とスラリーの場合よりも少なく、土壌に残存する割合が68%と高くなる。堆肥施用時の牧草におけるふん尿由来窒素の持ち出し量はスラリーよりも少ないが、土壌・化学肥料由来窒素の持ち出し量が多いので、スラリーと堆肥における3年間合計の持ち出し量の差は小さい。行方不明には、誤差の他に揮散、脱窒、溶脱などによる損失が含まれると考えられ、その割合はスラリーで20%、堆肥で15%と差が小さい(図3)。

成果の活用面・留意点
1.本成果は、ふん尿有効利用技術の開発とその時の環境影響評価を目的とする研究の参考になるとともに、生産現場におけるふん尿主体施肥普及時の基礎知識として有用である。
平成17年度北海道農業試験会議(成績会議における課題名および区分)
「草地における重窒素標識乳牛堆肥およびスラリーに由来する窒素の動態」(研究参考)
図表1 213680-1.jpg
図表2 213680-2.jpg
カテゴリ 肥料 施肥 乳牛

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