ウシ受精卵を用いた新たな遺伝病診断法(QP法)

タイトル ウシ受精卵を用いた新たな遺伝病診断法(QP法)
担当機関 受精卵移植科
研究期間 2005~2005
研究担当者 陰山聡一
森安 悟
扇 勉
南橋 昭
尾上貞雄
平山博樹
澤井 健
発行年度 2006
要約 受精卵段階での遺伝病の診断は、QP法を用いることにより、従来法のPCR後の制限酵素処理、電気泳動を省けるため、コスト低下と大幅な所要時間の短縮(約2時間、従来法の1/4)ができる。しかし、現状では、QP法はPCR法の感度に及ばないものの、血液などを試料とした判定の簡易迅速化に有効である。
キーワード QP法、ウシ、受精卵、遺伝病、診断、迅速、安価
背景・ねらい  牛の遺伝病は、現在、血液検査で保因牛同士の交配を避けることにより発生を防いでいるが、スーパーカウなどの優秀な牛が遺伝病を保因している場合、遺伝資源の有効活用が制限される。そこで、受精卵段階で遺伝病保因の有無を判定し、遺伝的に優れ、かつ遺伝病フリーな受精卵だけを移植できる遺伝病診断技術の開発が望まれている。
 本課題では新規な蛍光消光プローブであるQProbeを用いた遺伝子解析技術(QP法)に、平成13年度成績「受精卵の遺伝子解析による牛の遺伝性疾患診断法の開発」における少数細胞からの効率的なDNA抽出法を組み合わせることにより、牛受精卵の一部の細胞を材料とした簡便・迅速・安価な遺伝病診断技術を開発する。
成果の内容・特徴
  1. バンド3の配列情報に基づき、QProbe およびプライマーを設計して、QProbeはQP-1、プライマーはフォワードにF1、リバースにR2を選択する。
  2. 表1の条件でリアルタイムPCRを行うことにより、正常型(ワイルド型)と変異型を安定して判定することができる(図1)。また、本法の感度は、遺伝子型の判定に必要なDNA量が、正常型(正常 / 正常)、ホモ型(変異 / 変異)およびヘテロ型(正常 / 変異)においてそれぞれ10、25および50pgである。
  3. 桑実胚から採取した細胞を用いてQP法とPCR-RFLP法を比較したところ、PCR-RFLP法が、割球5細胞以上で正常型、ヘテロ型それぞれの遺伝子型を100%正しく判定できるのに対して、QP法は、10細胞で正常型を100%、ヘテロ型を89%正しく判定できる(表2)。
  4. PCR-RFLP法は準備からPCR終了まで約3時間、制限酵素消化に約4時間、電気泳動に約1時間で、合計8時間程度が必要であるが、QP法は準備からリアルタイムPCR終了まで約2時間で、すぐに遺伝子型を判定できるため所要時間を従来の1/4程度まで大幅に短縮することができる(表3)。
成果の活用面・留意点
  1. QP法は、家畜において遺伝性疾患をはじめ様々な遺伝的形質について受精卵段階での遺伝子型判定に応用可能と考えられるが、現状では、QP法はPCR法の感度に及ばないことから、DNA量を十分に確保できる血液などを試料とした判定の簡易迅速化に有効である。
  2. QP法およびバンド3遺伝子型診断法は、特許取得または出願されており、営利目的の利用には権利者から特許実施の許諾を得る必要がある。
図表1 213715-1.jpg
図表2 213715-2.jpg
図表3 213715-3.jpg
図表4 213715-4.jpg
カテゴリ 遺伝資源 遺伝的形質 コスト 診断技術

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