タイトル |
おとり植物を利用したジャガイモモップトップウイルスの多検体土壌診断法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 |
2006~2006 |
研究担当者 |
森元幸
清水基滋(道立十勝農試)
中山尊登
津田昌吾
畑谷達児(北大院農)
不破秀明(種管セ中央)
眞岡哲夫
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発行年度 |
2006 |
要約 |
土壌を懸濁した水耕培養液中でおとり植物のトマトを栽培し、根部よりRNAを抽出して、RT-PCR-マイクロプレートハイブリダイゼーション法を行うことにより、多検体の土壌試料からジャガイモモップトップウイルスを高感度かつ高精度に検出することができる。
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キーワード |
ジャガイモモップトップウイルス、塊茎褐色輪紋病、ジャガイモ粉状そうか病菌、おとり植物、PCR-マイクロプレートハイブリダイゼーション法(PCR-MPH)、多検体土壌診断法
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背景・ねらい |
2005年11月に北海道十勝地方でジャガイモモップトップウイルス(PMTV)による塊茎褐色輪紋病(図1)が発生し、日本有数のばれいしょ生産地域を脅かす事態となっている。本ウイルスはジャガイモ粉状そうか病菌により土壌伝染することが知られているが、これまで適確な土壌診断法がなく、発生地ではその開発が緊急に求められている。そこで、粉状そうか病菌がナス科植物を宿主とすることを利用して、トマトをおとり植物として用いた高感度・高精度な土壌診断法を開発、実用に供し、本ウイルスの発生実態を解明する。
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成果の内容・特徴 |
- 土壌診断に供試する土壌は予め土塊を細かく砕き風乾しておく。おとり植物には園芸培土で3~4週間栽培したトマトを用い、予め水耕培養液中で1週間順化培養を行う。供試土壌を懸濁した水耕培養液にトマト根部を浸漬し、18℃、9日間培養後、根部からRNAを抽出する。RNAを鋳型とし、PMTV特異的プライマーを用いてRT-PCR-マイクロプレートハイブリダイゼーション(MPH)法に供し、呈色反応によりウイルスの有無を判定する(図2)。
- PMTVの検出に用いるRT-PCR-MPH法は、RT-PCR法と比較してさらに高感度にPMTVを検出可能である(図3)。
- 本法を用いると、塊茎褐色輪紋病が発生している圃場の土壌のみならず、本病未発生の圃場の土壌からでもPMTVの汚染の可能性を診断できる。PMTVが存在しない圃場の反応は極めて弱いため、結果の判定は容易である(図3)。
- 塊茎褐色輪紋病発生地の周辺圃場で採取した土壌試料180点を本法による土壌診断に供試すると、PMTVが検出される試料が120点認められる。これらの圃場のうち現時点で塊茎褐色輪紋病が発生している1圃場以外の119圃場では、本病は未発生であっても既にPMTVに汚染されている可能性が高いと判断できる(表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本法は特許出願中(ジャガイモモップトップウイルス土壌汚染診断法、特願2006-305477)であり、商業的利用にあたっては実施許諾が必要である。
- 本法はPMTV汚染程度を定性的に診断する技術である。
- 本法に供試する土壌試料の採取にあたっては、ジャガイモシストセンチュウ土壌検診法(北海道ジャガイモシストセンチュウ防除対策基本方針の推進について、北海道農政部、1983)に準じ8歩幅法等の採取方法を採用し、圃場全体から万遍なく採取した後、良く混合する。また、採取した試料の取扱いも同指針を参考に汚染防止に留意する。
- PMTVの有効な防除技術は現在のところ存在しないので、本法を活用して生産物、残渣ならびに土壌等におけるPMTVの汚染状況を把握し、当面、汚染圃場から周囲へのPMTVの拡散を防ぐ手段を講じる必要がある。
- 本法はPMTVの総合的な防除法を確立するために、防除効果の評価技術として活用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
病害虫
土壌診断
トマト
なす
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評価法
防除
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