タイトル |
たまねぎ有機農業が成立可能な収量水準 |
担当機関 |
北海道立中央農業試験場 |
研究期間 |
2004~2006 |
研究担当者 |
白井康裕
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発行年度 |
2006 |
要約 |
たまねぎの有機農業に要した費用は、生産費調査の水準の約1.3倍である。一方、販売価格は通常の1.3倍である。たまねぎの有機農業に取り組む際には、最低でも4,400kg/10a以上(価格81.0円/kg)を実現する必要がある。
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キーワード |
有機農業、費用、労働時間、損益分岐点、タマネギ
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背景・ねらい |
消費者の安全志向の高まりを背景に、有機農業を試みる経営が、北海道においても増加することが予想される。これまでの調査では、有機たまねぎの収量や価格は経営間で大きく異なることが指摘されている。そこで、20年近くに渡り有機農業の産地づくりに取り組んできたA産地における調査・分析から、たまねぎの有機農業の労働時間と費用の特徴を明らかにし、その成立に必要となる収量水準を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 有機農業の除草に要した時間は、慣行栽培の4倍程度に増加する。また、播種・定植に要した時間は、補植作業の増加に伴い1.3倍に増加する。一方、収穫調製に要した時間は、有機農業の収量水準が低いことから減少する。以上を反映して、たまねぎ有機農業の労働時間は、慣行栽培の1.6倍に増加する(表1)。
- 有機農業の肥料費は、発酵鶏ふん等の有機物を多量に施用することから上昇する。一方、農業薬剤費は、化学合成農薬を使用しないため生じない。ただし、植物活性を図る目的で葉面散布資材を使用するため、諸材料費が上昇する。また、農機具費は、収穫以降の衛生面に配慮し、有機専用のコンテナを保有するため上昇する。更に、JASの認定・検査等により公課諸負担や研修会等の参加費用により生産管理費も上昇する。以上を反映して、たまねぎ有機農業の費用は、生産費調査の水準を1.3倍程度上回る(表2)。
- 北海道における有機たまねぎの平均価格は81.0円/kgであり、市場価格の1.3倍で取引されている。A産地では、農協を中心として販路の開拓を行うとともに、消費者との交流により取り組みに対する理解を得ることで、有機たまねぎの高値取引を実現している。
- A産地をモデルに損益分岐点となる収量水準を求めたところ、現状の価格水準(81.0円/kg)では、4,340kg/10a以上の収量を確保できると、家族労賃を含む生産費を補填することが可能になる(表3、表4)。また、平均的な市場価格の水準である62.4円/kgでは、4,398kg/10a以上の収量を確保しないと、物財費と雇用労賃を購えない。そのため、たまねぎの有機農業に取り組む際には、価格下落のリスクを考慮して最低でも4,400kg/10a以上を実現し、物財費と雇用労賃を補填するとともに、所得形成に向けて更なる販売価格と収量の向上に努める必要がある。
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成果の活用面・留意点 |
- 新たにたまねぎの有機農業に取り組む場面で参考にする。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
有機農業
有機栽培
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