タイトル |
北海道における小麦の子実灰分の実態とその変動要因 |
担当機関 |
道立北見農試 |
研究期間 |
2005~2006 |
研究担当者 |
西村努
吉村康弘
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発行年度 |
2007 |
要約 |
小麦の子実灰分は年次間、地域間で大きく変動する。灰分を増加させる要因は、融雪期~出穂期までの低温多雨と登熟期の高温、作土の有効態リン酸の過剰蓄積、基肥リン酸の過剰施肥、倒伏・病害による子実の登熟不良、高灰分品種の作付である。
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キーワード |
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背景・ねらい |
2005年(収穫年度、以下同様)以降の国内産小麦に対して、子実の灰分含有率(以下、灰分)を含む新たな品質評価基準が設定されている。しかし、過去に北海道一円で灰分に関する実態調査や変動要因を取りまとめた試験事例はほとんどない。そこで、子実灰分の実態調査を行うとともに、灰分と気象、土壌、栽培法、品種等の関係から、灰分の主な変動要因を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 灰分は年次間、地域間で大きく変動した。主要産地4支庁産の秋まき小麦「ホクシン」の灰分(平均値)は過去11年間で1.40~1.61%と変動し、支庁間差も毎年0.03~0.21ポイントみられる。このうち、日本めん用の基準値1.60%を超過したのは2カ年のべ4支庁である。2005~2006年に生産者圃場から収集した「ホクシン」計415点のうち、基準値を超過した割合は2005年は17%、2006年は67%である(データ略)。
- 子実中に含まれる無機成分は2カ年平均で、 Kが33%、Pが23%、Mgが6%であり、この3成分で灰分の62%を占める。子実中のP含有率が高まると灰分は増加し、r=0.79~0.85の高い相関がある(データ略)。
- 「ホクシン」の灰分は融雪期から出穂期までの低温多雨、登熟期の高温により増加する(データ略)。
- 作土の有効態リン酸が多くなると灰分は増加する(図1)。2006年の3地域を対象に、乾土100g当たりの有効態リン酸を10~30mg(基準値)、30~70mg、70mg以上と3段 階に区分し、灰分の平均値を比べると、それぞれ1.61%、1.66%、1.68%と増加する。
- 春まき小麦について、子実の登熟条件が良好な場合(容積重840g/L以上)は、基肥のリン酸施用量を標準量から半減すると灰分は0.02~0.05%減少する。一方、作土の有効態リン酸が10mg(/100g乾土)前後の場合、収量は低下する(図2)。
- 倒伏の発生、立枯病や眼紋病の発病程度が高い場合は、容積重・千粒重は低下し、灰分は増加する(表1)。
- 灰分には品種間差があり、秋まき小麦は「ホロシリコムギ」、「ホクシン」、「きたもえ」、「きたほなみ」の順に低くなり、春まき小麦は「春よ恋」「はるきらり」が「ハルユタカ」より低い(データ略)。
- 以上から、灰分を増加させる条件を表2に示す。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果は小麦の品質評価基準に対応するため、北海道における小麦子実の実態とその変動要因を示す。
- 当面の対応として、適切な肥培管理、病害・障害発生の防止に努めるが、年次・地域によっては、灰分が品質評価基準値を上回る場合がある。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分 「小麦の子実灰分の実態とその変動要因」(指導参考)
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
小麦
施肥
立枯病
肥培管理
評価基準
品種
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