タイトル |
十勝山麓・沿海地帯における秋まき小麦の低収要因と対応方向 |
担当機関 |
道立十勝農試 |
研究期間 |
2004~2006 |
研究担当者 |
佐藤康司
竹内晴信
中津智史
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発行年度 |
2008 |
要約 |
北海道十勝地方の山麓、沿海地帯における秋まき小麦の低収は、日照時間の短さと低温、一部では土壌低pH・土壌凍結に起因している。収量改善対策として、品種「きたほなみ」の導入が最も効果的で、融凍融雪の促進を図る等、基本技術励行も重要である。
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キーワード |
秋まき小麦、低収要因、日照時間、低温、乾物生産、収穫指数、きたほなみ
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背景・ねらい |
十勝山麓・沿海地帯における秋まき小麦の低収要因を、気象的および土壌・栽培的要因から解析し、収量、品質を安定化するための対応方向を示す。
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成果の内容・特徴 |
- 十勝中央地帯と比べた小麦子実収量は、十勝山麓で約10%、十勝沿海で約16%低い。
- 十勝山麓地帯では、越冬前と融雪期、起生期以降5月中旬までは3地帯中で最も低温に経過する。各時期とも積算日照時間は短い。降水量は秋に少なく、春以降は沿海地帯と同程度である。十勝沿海地帯では、越冬前は降水量が多く、融雪期が遅いことに加え、特に出穂期以降は最も低温で経過する。積算日照時間は特に5~6月に短くなる。穂ばらみ期の耐冷性は「はくちょうもち」「風の子もち」より強い“極強”であり、 開花期耐冷性は“中~やや強”である(図1)。
- 小麦の低収要因として、起生期以降の生育期間中の日照時間が短いことによる影響が大きく、低温も影響している。また十勝中央地帯と比較して乾物生産量と収穫指数(HI:子実乾物重/地上部乾物重)が低い傾向にあり(図1)、越冬前茎数を増やしてもHIは高まらない(図2)。
- 十勝山麓・沿海地帯では、十勝中央地帯と比較して台地土、泥炭土の分布割合が高い。土壌化学性には大きな差はないが、低pHで収量の低い町村が認められる。
- 土壌凍結が深いと春の地温上昇が遅れ、小麦生育が遅延して減収する。凍結深は沿海地帯や西部山麓地帯では特に深くはないが、東北部では深く凍結し融凍の遅れる例が見られる。
- 「きたほなみ」の導入は千粒重や容積重を高め、17~40%の増収効果が認められたことから、十勝山麓・沿海地帯における収量改善対策として有効である(表1)。
- 春 期の不織布被覆により約一ヶ月間の積算地温が28℃上昇し、草丈が伸びる傾向が見られたが、被覆除去後の生育差は徐々に縮小し、収量に及ぼす影響は判然としない。
- 薄播・狭畦栽培による受光態勢の改善は、粒数や千粒重を高めたが、葉面積指数やHIの改善効果は小さく、増収効果は得られない。
- 以上により、気象条件の不利な十勝山麓・沿海地帯において有効な収量改善対策としては、「きたほなみ」の導入が最も効果的な対応である。低温な春期の生育を促進するためには、融雪融凍促進に配慮し、基本的な栽培法の遵守と土壌診断に基づく施肥対応を行うことが重要で、増肥による効果は小さい(表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果は十勝管内の山麓・沿海地帯における今後の低収改善対策の参考とする。
- 「きたほなみ」の導入に当たっては、「めん用秋まき小麦「きたほなみ」の高品質安定栽培法(平成20年北海道普及推進事項)」を参考にする。
平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分 「十勝山麓・沿海地帯における秋まき小麦の低収要因と対応方向」(指導参考事項)
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
狭畦栽培
小麦
施肥
土壌診断
品種
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