タイトル |
大麦基肥の表面施用による生育改善 |
担当機関 |
福井県農業試験場 |
研究期間 |
1998~1999 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1999 |
要約 |
大麦の基肥は、耕起前の散布によって土壌全層に施用するのに比較し、播種(覆土)後に散布(表面施用)する方が、茎立期以降の生長が旺盛になり肥料の利用効率が高い。
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背景・ねらい |
麦作は流通体制の変化や新たな食料生産対策が進められる中で、品質向上とコスト低減が一層強く求められており、慣行の栽培方法の再検討が必要である。基肥はこれまで全層施用されてきたが、既に1960年に農事試(当時)では基肥表面施用の有効性が示されている。秋冷、積雪地帯での食用大麦産地として、また近年湿害と相まって激化している12月以降の葉色黄化対策の面でも基肥の効果確保は他産地以上に重要である。そこで表面施肥の効果について現在の福井県麦作の中での適応性を検討し、生産技術の改善に役立てる。
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成果の内容・特徴 |
- 基肥を表面施用にするだけで、麦の全体的な生育量は増大する(表1)。
多肥多収性で播性の低い「シュンライ」では顕著に多収となる。有望系統「東山皮96号」でも同様な可能性が認められる。「ミノリムギ」では収量にまで結びつきにくい。
- 表面基肥では、出芽から約1ヶ月の年内生育期間には、葉色はやや濃いものの、茎数・葉面積等は僅かに小さい。ところが、越冬期間中に逆転して、翌年茎立期以降には差が
拡大する(図1)。このとき窒素濃度には大差なく、生育量の大きいだけ窒素吸収総量 も多い。
- このため、全層施肥を、表面施肥に変更すれば施肥量を節減できる。また1部を年内追肥として分施するとより効果が高い(表2)。
- 基肥として施用された窒素は、表面施肥の方が全層施肥よりも長期
間土壌に保持される(図2)。 以上のように、基肥を表面施用にすると、種子近傍に肥料がないため初期生育はやや劣るが、窒素が比較的長期間土壌に保持されるために最終的な吸収量は多くなる。従って、窒素の増施と同様の効果が見込まれ、増収または基肥施用量の節減が図れる。
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成果の活用面・留意点 |
- 用いた基肥は、品名「くみあい尿素入り複合燐加安402」(略称:元肥1号)である。
- 近年の暖冬、少雪年での結果である。
- 基肥量は圃場に合わせて決定する。特に茎葉の生育が旺盛になり過ぎれば、倒伏や細麦、硬質粒の多発など品質低下の危険性が増す。
- 施肥が遅れると出芽が劣ることがあるので、播種直後に施用するとともに均一散布に留意する。
- 排水対策が不十分な圃場での効果は期待できない。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
肥料
大麦
湿害
施肥
多収性
低コスト
播種
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