タイトル |
水稲種子の温湯浸漬法による数種の種子伝染性病害の同時防除 |
担当機関 |
長野県農事試験場 |
研究期間 |
1995~1995 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1995 |
要約 |
浸種直前の水稲種子に対する60℃5~10分間の温湯浸漬は、主要な種子伝染性病害(イネばか苗病、イネいもち病、イネもみ枯細菌病及びイネ苗立枯細菌病)防除に有効である。
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背景・ねらい |
水稲病害の中で種子伝染性病害の重要性は極めて高い。現在、これらの病害防除には主に種子消毒が普及されているが、以下の問題点がある。 ア.一部の病害では、防除効果が不安定である。イ.現在、卓効を示す農薬に対しても薬剤耐性菌出現の危険性がある。ウ.環境に負荷を与えない農業の推進から、化学農薬の代替技術が求められている。 こうした背景から、主要な種子伝染性病害に対する温湯浸漬の防除効果を検討した。
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成果の内容・特徴 |
- 温湯浸漬の手順
処理手順:供試籾を30gづつテトロン布に包み、いもち病、ばか苗病及びもみ枯細菌病では55~60℃5~10分間、苗立枯細菌病では60℃5~10分間浸漬する。その後、直ちに流水で冷やし、浸種後播種する。
- 防除効果
1)いもち病:いもち病自然感染籾では55℃5分間の浸漬処理で胞子形成籾率は著しく低下した(図1)。 2)ばか苗病:温湯浸漬処理の防除効果は、発病苗率で対照のプロクロラズ乳剤1,000倍、24時間浸漬処理と比較するとやや劣ったが、60℃10分間の浸漬処理では90以上の防除価が得られた(図2)。 3)細菌性病害:育苗期における細菌性病害に対する防除効果は、対照の銅水和剤2,000倍、24時間浸漬処理と比較し、イネもみ枯細菌病ではほぼ同等、イネ苗立枯細菌病では優った(図3、図4)。
- 生育への影響
1)発芽への影響:キヌヒカリを用いて調査したところ、55℃では30分、60℃では20分、62℃では15分、64℃では10分まで90%以上の発芽率が得られた。また、9品種に対し60℃、5~10分の温湯浸漬処理を行ったところ、60℃10分間処理において平成4年に採種した秋晴で発芽率が90%をわずかに下回った他はいずれの品種でも90%以上の発芽率が得られた。 2)苗質への影響:60℃5~10分の温湯浸漬処理を行った籾の苗質(草丈、葉令、乾物重)は無処理と差が認められなかった。
- 以上の結果、水稲種子の60℃5~10分の温湯浸漬処理は、主要な種子伝染性病害防除に有効な手段である。
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成果の活用面・留意点 |
- 発芽能力の劣る籾(採種年が古い、保存状態が悪い等)、水分含量の高い籾を用いた場合、発芽率の低下する恐れがある。
- 処理籾の保存性、大量処理法については未検討であり、今後の課題である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
病害虫
育苗
いもち病
種子消毒
水稲
耐性菌
農薬
播種
品種
防除
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