タイトル |
イネ種子伝染性病害に防除効果のある糸状菌Trichoderma atroviride |
担当機関 |
静岡農試 |
研究期間 |
1999~2001 |
研究担当者 |
伊代住浩幸
外側正之
市川健
土井誠
牧野孝宏
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発行年度 |
2001 |
要約 |
県内の植物根圏より分離したTrichoderma atroviride SKT-1株は、イネもみを胞子懸濁液に浸漬することにより、糸状菌病のばか苗病、細菌病のもみ枯細菌病、苗立枯細菌病に対し、従来の化学農薬と同等の防除効果を示す。
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キーワード |
Trichoderma atroviride、イネ、育苗、種子伝染性病害、生物防除
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背景・ねらい |
イネの種子伝染性病害は、糸状菌病及び細菌病の双方に対し化学合成農薬により防除されているが、耐性菌の発生による防除効果の安定化や、もみを高濃度薬液に浸漬した後の廃液処理が問題となっている。このため、1種類の微生物で複数の病害に防除効果を示し、廃液の処理が容易な生物農薬を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- Trichoderma atroviride SKT-1株は、県内のノシバ根圏から分離した糸状菌である。
- SKT-1株は、イネ種子伝染性病害のばか苗病、もみ枯細菌病及び苗立枯細菌病に対し、既存の化学農薬と同等の防除効果を示す。(図1、2、3)。
- SKT-1株の製剤は、胞子を水に懸濁させた形状のもので、水で200倍に希釈してイネもみを浸漬する。処理時期は、浸種前24~48時間もしくは催芽前24~48時間浸漬とする。処理時の胞子濃度は、106cfu/mlである。
- 本菌株を土壌に接種し、イネ、トマトなど10科25種の作物をは種または移植したところ、これらに病原性を示さない。
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成果の活用面・留意点 |
- 本研究は、民間の農薬メーカーとの共同研究であり、研究の一部及び製剤化についてはメーカーが担当している。
- 育苗中には、培土表面及び内部に本菌による緑色の菌そうが認められるが、次第に消失し、イネ苗の生育には影響がない。
- 生菌体のみに、防除効果が認められる。オートクレーブ処理による死菌体、菌体よりの抽出画分には防除効果が認められない。
- 本菌株は、育苗時のイネ褐条病、いもち病及びごま葉枯病にも防除効果が認められる。これらの病害については、処理濃度及び処理方法等につき更に検討している。
- 本菌株はシイタケ菌に対し、中~弱の病原性を有する。シイタケ栽培施設近傍での本菌の使用には注意する。
- 生物農薬として登録し実用に供するため、日本植物防疫協会による生物農薬連絡試験を実施(平成12~13年度)し、上記3病害につき「実用性あり」の判定を受けた。農薬登録申請中である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
病害虫
育苗
いもち病
ごま
しいたけ
耐性菌
トマト
農薬
防除
もみ枯細菌病
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