タイトル | 作物生理機構の新規解明のための「ジスルフィドプロテオーム」法 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 | 1999~2000 |
研究担当者 |
黒田昌治 黒田秧(一部カリフォルニア大学との共同研究) 小林明晴 矢野裕之 |
発行年度 | 2001 |
要約 | 作物における蛋白質のジスルフィド結合の酸化還元状態をプロテオームレベルで解明できる「ジスルフィドプロテオーム」法を開発した。新しい生理機能をもった蛋白質の発掘や生理機構の解明に応用できる。 |
キーワード | プロテオーム、ジスルフィドプロテオーム、ジスルフィド結合、酸化還元 |
背景・ねらい | イネゲノム研究で得られた情報を生理機能の解明や新しい有用品種の開発に応用するには、個々の遺伝子が蛋白質としてどのように機能するか、また、それをどうコントロールできるかを包括的に解明するための「機能プロテオーム」研究が不可欠である。蛋白質の構造や機能は、ジスルフィド結合の酸化還元によってコントロールされる場合が多く、これは、リン酸化/脱リン酸化によるコントロールと並んで重要な調節機構である。作物におけるジスルフィド結合の酸化還元状態をプロテオームレベルで包括的に解析できる新しい研究手法を開発し、ゲノム情報の実体的解析に向けて応用を図る。 |
成果の内容・特徴 | 1. 蛍光物質モノブロモバイメインによる、ジスルフィド結合に関わらないフリーのSH基の特異的なラベリングと二次元電気泳動を組み合わせることにより、個々の蛋白質のジスルフィド結合の酸化還元状態をプロテオームレベルで可視化することができる。 2. この「ジスルフィドプロテオーム」法を、ジスルフィド結合の酸化還元をコントロールする酵素チオレドキシンのターゲット蛋白質の同定にin vitroで応用することで、ラッカセイ種子では20個以上のターゲット蛋白質を可視化できる(図1)。このうち5個を同定し、種子の成熟時に重要な役割を果たす2個の新規蛋白質を発見した(図2)。 3. イネ種子の主要な貯蔵蛋白質グルテリンの動化機構の解明のため、in vivoで応用した結果、グルテリンにおいてもジスルフィド結合のダイナミックな酸化還元が実際に起こり、これがプロテインボディでのコンパクトな収納と、効率的な動化を可能にしていることを明らかにした(図3)。 4. 以上のように、「ジスルフィドプロテオーム」法は、in vitroでは新しい機能蛋白質の発掘に、in vivoでは新しい生理機能の解明に応用することができる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. ジスルフィドプロテオーム」法は、新規性と汎用性から国際的に高く評価されており、動・植物、可溶性/不溶性(膜)蛋白質を問わず応用可能である。特にイネポストゲノム/プロテオーム研究の重要な解析法の一つとして期待されている。 2. ジスルフィド結合はパンのドウ形成や、蛋白質のアレルゲン性にも寄与する。ジスルフィドプロテオームは、こうした工業・医薬分野にも応用可能である。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
カテゴリ | 品種 らっかせい |