「ポット検定」法による精度の高い大麦の赤かび病抵抗性検定

タイトル 「ポット検定」法による精度の高い大麦の赤かび病抵抗性検定
担当機関 (独)農業技術研究機構 作物研究所
研究期間 2000~2001
研究担当者 吉田めぐみ
河田尚之
塔野岡卓司
発行年度 2002
要約 大麦の赤かび病抵抗性検定法として、人工気象条件下でポット栽培した開花期の穂に病原を噴霧接種し恒温過湿条件下で発病を促す「ポット検定」法を開発した。本検定法は、圃場検定との相関や年次間相関も高く、気象条件に関わらず精度の高い抵抗性検定ができる。
キーワード 大麦、赤かび病、抵抗性、検定法、標準品種
背景・ねらい 麦類の赤かび病は、発病程度が感染時の環境条件に大きく影響され、安定した抵抗性評価を行うことが難しい。抵抗性育種を進めるには検定法の確立が不可欠であり、精度の高い抵抗性検定法を開発するとともに、抵抗性判定の標準品種を選定する。
成果の内容・特徴 1.
「ポット検定」法は、初春のビニールハウス内でポット栽培し開花期の穂(ポットあたり5~8穂)に病原菌(Fusarium graminearumの分生胞子懸濁液 5×105個/ml)を噴霧接種し、接種後ほぼ湿度100%の湿室に一晩置き、翌日再接種を行った後、断続的なミスト散水により恒温過湿条件下(湿度70~100%、20±5℃)で発病を促す。1および2週間後に各ポットの代表的な発病程度の穂を10段階の罹病性スコア(0:無発病~9:全小花が発病)で評価する。
2.
「ポット検定」は、開花期に切り取った穂に病原菌を噴霧接種し恒温過湿条件下で発病を促す「切り穂検定」、およびスプリンクラー設置圃場で開花期に病原菌を噴霧接種し霧状散水により発病を促す「圃場検定」との罹病性スコアの相関は高い(図1)。
3.
各検定法による罹病性スコアの年次間相関はそれぞれ同程度に高いが(表1)、「切り穂検定」では感染回避によって罹病性スコアが0近くに判定される場合が多く(図1)、「圃場検定」は気象条件により影響を受ける恐れがある。これに比べて、「ポット検定」は、気象条件に関わらず人工条件下で確実に発病させ精度の高い抵抗性検定ができる方法であり、検定に要する労力は「圃場検定」より大きいが、ポット栽培した材料を用いる場合の「切り穂検定」とは同程度である。
4.
「ポット検定」、「切り穂検定」、「圃場検定」による検定結果をもとに、出穂期が早・中・晩で、抵抗性判定の基準となる大麦標準品種10品種を選定した(表2)。
成果の活用面・留意点 1.
抵抗性の正確な判定には、複数年次または複数種類の試験により抵抗性評価を行うことが望ましい。
2.
「ポット検定」において、出穂期(または接種日)と罹病性スコアとの間に正の相関が認められる場合があり(表1)、接種2週間後の罹病性スコアについては晩生系統が弱く評価される場合がある。
3.
選定した標準品種は耐寒雪性の弱い品種が多く、寒地、寒冷地向けには別途標準品種を選定する必要がある。
4.
標準品種を含め、抵抗性が中程度の品種は、抵抗性強および弱の品種に比べ抵抗性評価の変動が大きい。
5.
病原として、赤かび病菌Fusarium graminearumのH-3菌株を用いた結果である。
図表1 216854-1.gif
図表2 216854-2.gif
図表3 216854-3.gif
カテゴリ 育種 大麦 寒地 抵抗性 抵抗性検定 品種

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