水稲作における精密農法の導入形態と経営的評価

タイトル 水稲作における精密農法の導入形態と経営的評価
担当機関 石川農研
研究期間 1999~2002
研究担当者 工藤卓雄(現中央農業総合研究センター)
種本博(現金沢農林総合事務所)
佐藤和夫(酪農学園大学)
森尾昭文
発行年度 2002
要約 低コスト化を図るために作業可能面積に応じた利用に配慮すれば、リアルタイム土中光センサーは広域作業主体による導入が望ましい。水稲作における可変施肥の効果に関するシミュレーションと選択型コンジョイント分析による各ほ場情報の価値の定量化をもとにした試算から、増収を目的とした農業経営モデルを選択すれば収益は向上する。
背景・ねらい 精密農法の導入が農業経営に及ぼす効果を示すため、第一に機械の作業可能面積からコスト低減に最適な規模または機械の所有主体について検討を行う。第二に可変施肥による窒素コントロール以外の効果を含めて評価するため、アンケート調査に基づく選択型コンジョイント分析により、窒素及び腐植含量以外の情報の価値を定量化し、精密農法導入が農業経営に及ぼす効果を試算する。
成果の内容・特徴 1.
各機械システムは、コスト低減を図るため作業可能面積に応じた単位での所有が妥当であり、以下のように整理できる(図1)。収量メーター付コンバインと可変施肥機は、施肥や収穫作業を生産者が担っている現状から、大規模経営や集落単位による所有が妥当である。リアルタイム土中光センサーは200ha程度の作業が可能(表1)であることから、所有は広域作業主体(JA等)となる。データ処理システムとマッピングシステムはインターネットの活用により一元管理が可能であり、全国に利用者が増えればコストは低減する。
2.
石川県内全域の水稲作経営36件(有効回答数32件)のアンケートから、選択型コンジョイント分析により圃場マップに対する支払意志を計測した結果、土壌情報3種(窒素・腐植含量・pH)を基準として、そこにリン酸・カリウムが加わった5種になった場合、さらにケイ酸・微量要素を加えた7種になった場合、田面高低差の情報が加わった場合の追加情報の価値(追加的に支払っても良い料金)は、それぞれ、1,240円/10a、1,995円/10a、1,655円/10aとなる(表2)。
3.
精密農法の導入効果を試算すると、増収を目的としたモデルでは1,812円/10aの収益向上が可能である。しかし、施肥量削減モデルにおいては費用が便益を上回り、収益を向上させるためには化学肥料の削減がコメの付加価値向上につながる必要がある(表3)。また、リアルタイム土中光センサーによりリン酸・カリウムを含む土壌5種の情報が得られるならば、追加的情報の価値として1,240円/10aが加わり(表2)、施肥量削減モデルにおいても便益が費用を上回ることになる(表3)。
成果の活用面・留意点 1.
経営規模別や栽培管理方法別等の試算により、精密農法導入のターゲットが明確になる。
2.
ここでの可変施肥の効果は生産者が適切に地力を把握している場合の一律施肥と比較し た導入効果であり、大区画ほ場整備直後や耕作者の変更等の理由により基本的な地力デー タが不足しているケースにおける精密農法の導入では効果はより大きくなる。
3.
技術評価における選択型コンジョイント分析の活用により、実証データが得られない効 果に対する補完が可能となり、導入効果の過小評価が避けられる。
図表1 217130-1.gif
図表2 217130-2.gif
図表3 217130-3.gif
図表4 217130-4.gif
カテゴリ 肥料 経営管理 経営モデル コスト 栽培技術 水稲 施肥 大規模経営 低コスト

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