タイトル | しめ縄加工に適するイネ品種「伊勢錦」の選定 |
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担当機関 | 新潟農総研 |
研究期間 | 1998~2002 |
研究担当者 |
阿部聖一 河合由起子 重山博信 小林和幸 松井崇晃 星 豊一 石崎和彦 平尾賢一 |
発行年度 | 2003 |
要約 | 「伊勢錦」は既存のしめ縄加工用主力品種である「実取らず」に比べ、草丈が長く、葉色が濃く、葉先の揃いが良く、1週間以上早く収穫できる。「伊勢錦」の導入により、「実取らず」との作期分散が可能となり、しめ縄加工用イネの栽培面積拡大により、中山間地域における水田機能の維持と地場産業のさらなる発展が期待できる。 |
キーワード | 伊勢錦、イネ、しめ縄、わら加工 |
背景・ねらい | しめ縄加工用イネの栽培は、新潟県の中山間地域における水田機能の維持と地場産業の振興に重要な役割を果たしている。しかし、加工に適した品種が「実取らず」以外にないため、収穫・乾燥作業が集中し、栽培面積の拡大を図る上で大きな問題となっている。そこで、「実取らず」との作期分散が可能な新たなしめ縄加工適応性品種を探索し、栽培面積の拡大による中山間地域の農業生産活動と地場産業の振興を図る。 |
成果の内容・特徴 | 1. 1998年よりのべ25品種・系統の特性調査を実施し、「実取らず」との作期分散が可能で、加工特性にも優れる新たなしめ縄加工適応品種として、「伊勢錦」を選出した。 2. 「伊勢錦」は「実取らず」より出穂期、成熟期とも3日遅い晩生熟期の粳種である。「実取らず」に比べ、草丈は明らかに長く、葉色も濃く推移する。茎数は少ないが、乾物重に大きな差は認められない。葉いもち圃場抵抗性は「実取らず」よりやや強いが、「コシヒカリ」より弱い「弱」である(表1、図1)。 3. 「伊勢錦」は茎が太く、乾燥品の手触りやしなやかさは「実取らず」よりやや劣るが、葉のつやは良好である。特に、商品上極めて重要とされる「葉先の揃い」に優れ、基部から先端部に至るまでの縄径が十分確保された付加価値の高いしめ縄加工製品の生産が可能である(表1、図2)。 4. 現地慣行の多肥栽培条件では「実取らず」に比べ、「伊勢錦」の葉色のさめが速い傾向が認められるが、7月中下旬の草丈は15cm以上長く、葉色も濃いことから、「実取らず」より1週間以上早い7月第5半旬から収穫が可能である(表2)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 現地試験に供試した「伊勢錦」は、農業生物資源研究所・ジーンバンクより配布を受けた種子(保存番号:00007851、JP番号:JP7109)を、作物研究センターにおいて試験栽培し、展開した個体の中から途中生育と出穂・成熟期の揃い、および草丈、茎数等によって淘汰・採種した系統である。 2. 普及に供する「伊勢錦」は、品種登録出願時の特性調査による2ランク以上の特性値の差はないものと判断されることから、種苗登録申請は行わない。 3. 「伊勢錦」の種子は、新形質米種子に準じた規定の手続き(平成14年4月、新潟県農産園芸課)により、新潟県内の生産者に限り配布する。 4. 「伊勢錦」は「実取らず」に比べ茎が太く、多肥条件下での葉色のさめが早いので、刈り取り適期を逃さないよう注意する。 5. 葉いもちの病斑は商品の価値を著しく低下させるので、葉いもちの予防防除を徹底する。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 病害虫 加工 加工特性 乾燥 栽培条件 水田 中山間地域 抵抗性 品種 防除 |