タイトル | ハモグリバエ類天敵寄生蜂の細胞内共生細菌と産雌性単為生殖化 |
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担当機関 | 静岡農試 |
研究期間 | 2004~2006 |
研究担当者 |
田上陽介 杉山恵太郎 土井誠 片山晴喜 金子修治 多々良明夫 西東力(静岡大) 萩森鉄矢(広島大) 三浦一芸(近中四農研) |
発行年度 | 2005 |
要約 | ハモグリバエ類天敵寄生蜂の優占種の一つであるハモグリミドリヒメコバチは、リケッチア感染の有無で産雌性単為生殖、産雄性単為生殖系統に分けられ、野外では両系統が混在する。カンムリヒメコバチはボルバキア感染により産雌性単為生殖化していない。 |
キーワード | ハモグリバエ類、天敵寄生蜂、細胞内共生細菌、産雌性単為生殖化 |
背景・ねらい | ハモグリバエ類の防除には数種類の天敵寄生蜂が用いられている。しかし、天敵寄生蜂(生物農薬)は生産コストが化学農薬と比較し高い。生産コストを低減する方法として、天敵寄生蜂の能力、増殖効率を高める産雌性単為生殖化が有効である。宿主である寄生蜂を産雌性単為生殖化する能力を持つ細胞内共生細菌が知られており、これを利用することで雌雄産む天敵寄生蜂を産雌性単為生殖化できる可能性がある。そこで、ハモグリバエ類とその天敵寄生蜂について産雌性単為生殖化した寄生蜂を作出するために必要な細菌を探索する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 供試した寄生蜂のうち、カンムリヒメコバチのみボルバキアに感染している(表1)。ハモグリミドリヒメコバチはボルバキアに感染していないが、細菌に感染しており(表1)、細菌の種類はリケッチアである(図1)。 2. 作製したハモグリミドリヒメコバチのリケッチアに特異的なプライマーを用いたPCRにより、野外で採集したハモグリミドリヒメコバチのリケッチアの感染率は87.7%(n=73)である。 3. リケッチアに感染しているハモグリミドリヒメコバチは、未交尾で雌のみを産む産雌性単為生殖を行う。ハモグリミドリヒメコバチの雌に50mg/mlのテトラサイクリン処理をすることにより、次世代は雌雄両方産まれ、雌はリケッチアに感染しているが、雄はリケッチアに感染していない(データ省略)。以上からハモグリミドリヒメコバチに感染しているリケッチアは産雌性単為生殖化に関与している。 4. ボルバキアに感染しているカンムリヒメコバチは、未交尾では雄のみを産み、交尾により雌雄産む。また、カンムリヒメコバチ雌にテトラサイクリン処理をしても、未交尾では雄のみ、交尾後は雌雄を産み、さらに産仔数にボルバキア感染の影響はみられない(データ省略)。以上からカンムリヒメコバチに感染しているボルバキアは産雌性単為生殖化に関与していない。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本成果において明らかにしたリケッチアは、他のハモグリバエ類天敵寄生蜂を産雌性単為生殖化させる素材となる可能性を持つ。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | 病害虫 くり コスト 農薬 防除 |