タイトル |
トマト養液土耕栽培で初期の葉柄中硝酸濃度が果実品質に及ぼす影響 |
担当機関 |
岡山農総セ |
研究期間 |
2002~2004 |
研究担当者 |
赤井直彦
谷 義夫
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発行年度 |
2003 |
要約 |
トマトの養液土耕栽培において、初期の樹勢が強すぎると尻腐れ果と異常茎の発生が増加し、逆に弱すぎると角張った果実(通称、ピーマン果)の発生が増加する。この時の樹勢の強弱は葉柄中の硝酸濃度を測定することで判断可能である。
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キーワード |
トマト、灌水同時施肥、初期生育、リアルタイム栄養診断
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背景・ねらい |
トマト養液土耕栽培における肥培管理は、リアルタイム栄養診断結果に基づく指標が各方面から示されている。しかし、定植後の施肥開始時期は一般的に第3果房開花期と言われているだけで、土壌からの養分供給量を十分考慮したものではない。本県においては第3果房開花期ごろまでの樹勢の強弱を診断し、圃場毎の施肥開始時期を判断する指標が求められている。 ここでは葉柄中の硝酸濃度と、異常茎・障害果発生との関係を明らかにし、適切な施肥開始時期の判断材料とする。
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成果の内容・特徴 |
- トマト栽培農家の圃場から採取した肥沃度の異なる8種類の土壌(圃場No1~8、No3、4は黒ボク土、他は黄色土)を用い、基肥無施用でトマトの養液土耕栽培を行った。トマトは第5果房の上で摘心し、品質・収量は第1~4果房までの果実について調査した。定植から施肥開始期までの管理状況を表1に示した。
- 第1果房開花前に葉柄中の硝酸濃度が1000ppmを下回り、さらに第1~2果房開花期に硝酸濃度が低下すると第2~4果房にピーマン果が多発する。このような圃場では土壌中の無機態窒素量も少ない。このため、十分な灌水を行っても葉柄中の硝酸濃度が第1果房開花期ごろまで1000ppmを下回る場合には、樹勢が低下するのを防止するため施肥開始時期を早める(図1上段、表2)。
- 第1果房開花期までに硝酸濃度が2000ppmを超えると、第1、2果房の尻腐れ果発生率が高くなり、第4果房付近の茎に窓あき・芯止まりなどの異常茎が発生する。このような圃場では、土壌中の無機態窒素量が多いため、灌水量を減らすとともに施肥開始時期を遅らせ、窒素の吸収を抑制する管理を行う(図1中段、表2)。
- 第1果房開花期ごろまでの硝酸濃度が1000ppm程度で推移すると、異常茎や尻腐れ果はほとんど発生しない。しかし、第1~3果房開花期に硝酸濃度が低下するとピーマン果が発生するので、この場合も施肥開始時期を早める(図1下段、表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- トマトの硝酸濃度は、最先端直下の葉の小葉を1区10枚程度採取し、その葉柄に乳鉢中で脱塩水を加え磨砕後、小型反射式光度計を用いて測定する。ここで得られた値と試料の生体重、加えた脱塩水の量から硝酸含量を求める。
- 調査に用いたトマトの品種は「桃太郎8」で、自根である。
- 尻腐れ果やピーマン果の発生は窒素の多少だけでなく、他の要因が大きく関わることがある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
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ピーマン
肥培管理
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