タイトル | 耕作放棄地への牛の放牧導入によるイノシシの牽制 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 近畿中国四国農業研究センター |
研究期間 | 1998~2002 |
研究担当者 |
井出保行 小山信明 高橋佳孝 小林英和 福田栄紀 |
発行年度 | 2003 |
要約 | ススキやクズが繁茂する耕作放棄地では、イノシシの掘削痕が多数みられるが、牛の放牧開始により、主要構成植物である両種は急速に衰退し、イノシシによる新たな掘削痕も認められなくなる。 |
キーワード | イノシシ、耕作放棄地、放牧、ウシ、ススキ、クズ |
背景・ねらい | 西日本の中山間地域では、イノシシによる農作物への被害が急増している。その背景として、耕作放棄地の増加が指摘されている。一方、近年になり、耕作放棄地の管理や利用を目的とした牛の放牧が行われるようになったが、その副次的効果として、獣害の軽減が報告されつつある。しかし、両者の因果関係については、ほとんど検証されていない。そこで、耕作放棄地への放牧導入が主要構成植物の動態とイノシシの掘削行動に及ぼす効果を検証する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 調査した耕作放棄地の主要構成植物は、ススキおよびクズであり、前者の出現株数は45.3株/100m2で、後者は28.6株/100m2である。それ以外にも16種の植物が出現したが、その量は極めて少ない(図1)。 2. 放牧導入直前における100m2あたりのイノシシ掘削痕は、新旧合わせると29か所であり、それらの合計面積は12m2である。また、各掘削痕に最も近い位置にある植物の93.5%はクズである(図1)。 3. イノシシは、晩秋から早春にかけてクズの根茎を掘削するが、その目的は主根に貯蔵された炭水化物にあると考えられる(表1)。 4. 調査地を含む遊休農林地(約1ha)において、成雌牛換算で240~360頭・日/ha/年の放牧を継続すると、主要構成植物であるススキおよびクズは急速に衰退し(図2)、イノシシによる新たな掘削痕も認められなくなる(図3)。 5. 以上のことから、耕作放棄地での放牧は、人や牛の出現に加え、イノシシから「食料(クズ)」と「隠れ場所(ススキ)」を奪うことで、その牽制に一定の効果があると考えられる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 耕作放棄地における牛の放牧については「中国中山間地域を生かす里地の放牧利用 -遊休農林地活用型肉用牛営農システムの手引き- (2002) 近畿中国四国農業研究センター」を参照されたい。 2. 耕作放棄地における牛の放牧をイノシシ害の防除に応用するためには、限定された一部の圃場だけではなく、より広い地域(例えば、集落レベル)における、長期的かつ計画的な適用が必要になると考えられる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 病害虫 きく 中山間地域 肉牛 防除 |