タイトル |
汚染ほ場の修復をめざしたカドミウム高吸収イネ科植物の選抜 |
担当機関 |
兵庫農総セ |
研究期間 |
2003~2007 |
研究担当者 |
桑名健夫
河野 哲
津高寿和
渡辺和彦
吉倉惇一郎
藤本廣司*
本名充雄*
相川良雄*(*三菱マテリアル)
|
発行年度 |
2004 |
要約 |
イネやソルガム(夏作)、エンバク(冬作)の中にはカドミウムの吸収量が多い品種がある。植物の吸収、持ち出しにより土壌中カドミウムを減少させるためには、適切な品種を組み合わせた「イネまたはソルガム+エンバク」の周年作付け体系が有望である。
|
キーワード |
カドミウム、汚染ほ場、汚染修復、イネ、ソルガム、エンバク
|
背景・ねらい |
近年、安全かつ安心な食品を求める国民の意識が高まっている。国外でも、コーデックス委員会 (国際的な食品規格を作成する政府機関) において、食品中のカドミウム濃度について従来より厳しい国際的な基準値が設定されつつある。このような情勢の中、カドミウムをめぐるリスク低減をめざし、兵庫県下の農耕地土壌中のカドミウム濃度を効率的に低下させるファイトレメディエーション技術(植物による吸収、収穫物の持ち出しにより土壌を浄化する技術)を開発し、カドミウム低汚染土壌(玄米中カドミウム濃度が0.4ppm未満の土壌)のさらなる修復を図る。そのため、県下低汚染地域に適したカドミウムをより多く吸収するイネ及びイネ科牧草をカドミウム高汚染現地ほ場で選抜する。
|
成果の内容・特徴 |
-
鉱山由来の研究用現地汚染沖積水田(礫質灰色低地土、作土中カドミウム濃度は1/10モル塩酸抽出法で約3 mg kg-1乾土)において、節水栽培で数品種のイネを黄熟期まで栽培し、地上部のカドミウム吸収を比較すると、「IR-8」など3品種は含有率も高く、吸収量も多い。これらの品種は日印交雑種であり、吸収量は年次間差が極めて大きく約10~25g/10aである(図1)。
- 前述の水田の一部を畑管理して、5種類の夏作牧草を青刈り牧草の栽培方法に準じて栽培し、カドミウム吸収量を比較すると、ソルガム類が高い吸収量を示す。ソルガムの乾物生産量は、2回刈り取りの合計で2t/10aを超える品種(晩生種)もあり、含有率はそれほど高くなくても吸収量は多くなり、約19g/10aに達する(図2)。
-
前述したソルガムの後作に、4種類の冬作牧草をは種し、翌春5月中旬まで栽培し、1回刈りでカドミウム吸収量を比較すると、エンバク類が高い値を示す。なかでも、野生種である1品種はとくに含有率が高く、その結果吸収量も突出して高い。約10g/10aに達するこのエンバクの吸収量は、高吸収イネの吸収量に匹敵する(図1、3)。
-
本ほ場では、適切な品種を用いることにより、「イネ+エンバク」体系で、年間約20~35g/10a、「ソルガム+エンバク」体系で、年間約30g/10aのカドミウム持ち出しが可能である(図1、2、3)。しかし、土壌中濃度の低下に応じて、吸収持ち出し量も低下すると仮定して試算すれば、1/10モル塩酸抽出法で3.0 mg kg-1乾土の作土濃度を1.0mg kg-1 まで低下させるのに要する年数は16年となる。目標達成年月は、当初の汚染レベルと修復目標濃度により異なるが、濃度を1.0 mg kg-1低下させるためには、5年以上にわたる長期的な取り組みが必要である(図4)。
|
成果の活用面・留意点 |
-
本成果は、兵庫県下低汚染地域の田畑輪換が可能な水田において適用できる。
-
本成果に加えて、カドミウム吸収を増加させる栽培技術や収穫物を処理する一連の技術開発(ほ場からの持ち出し、焼却、回収技術等)が望まれる。
-
本成果を活用した取り組みは、効果が明らかになるまで長い年月を要するため、行政的支援と社会的理解が不可欠である。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
図表3 |
 |
図表4 |
 |
カテゴリ |
栽培技術
水田
ソルガム
品種
|