TriticumおよびAegilops属植物における胚乳澱粉の側鎖長分布

タイトル TriticumおよびAegilops属植物における胚乳澱粉の側鎖長分布
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 近畿中国四国農業研究センター
研究期間 2005~2005
研究担当者 安井 健
佐々木朋子(食総研)
松木順子(食総研)
発行年度 2005
要約 Triticum およびAegilops 属植物の胚乳澱粉の側鎖長分布には種内に変異が認められる。種間の変異は小さいため、節および属の間には明瞭な違いが認められない。これらの属の植物の澱粉には老化特性に影響を与える程度の側鎖長分布の変異が存在する。
背景・ねらい 澱粉の側鎖長分布は、糊化および老化特性に影響を与える。大量生産されるパン類製品では、食品添加物の使用により澱粉の老化を抑制し、製品の商品性を保持できる期間(シェルフ・ライフ)の確保・延長を図っている。しかし、消費者は加工食品に対して安全性および安心感を求める傾向があるため、食品添加物の利用は今後減少するものと予想される。それに対応するためには、主たる原材料である小麦粉の特性を改変することによりシェルフ・ライフの確保・延長を図る必要がある。澱粉の構造からみると、短い側鎖の割合が多く、長い側鎖の割合が少ない澱粉は老化しにくい性質があるので、そのような胚乳澱粉をもつ品種はパン類製品のシェルフ・ライフを確保・延長できる原材料として有用と考えられる。そこで、パンコムギおよび近縁のTriticum およびAegilops 属植物の胚乳澱粉の側鎖長分布を解析し、澱粉の特性を改変しうる側鎖長分布の変異の有無を明らかにする。
成果の内容・特徴 1.
パンコムギおよび近縁のTriticum およびAegilops 属の全ての種(T. urartu を除く)における胚乳澱粉の側鎖長分布(表1)には種内に変異が認められる(図1)。また、各側鎖の割合の相関行列をもとにした主成分分析の結果が示すように、種間の変異は相対的に小さく、節および属の間には明瞭な違いが認められない(図1)。
2.
Triticum およびAegilops 属植物の胚乳澱粉では、典型的なA鎖(重合度〈DP〉10-13)およびB1鎖(重合度20-23)に相当する側鎖の割合の変動が比較的少なく、重合度6-9の短い側鎖の割合の変動が大きい(図2)。
3.
Triticum およびAegilops 属植物の澱粉では、DP6-12の側鎖の割合は26.3-30.9%の範囲(差;4.6ポイント)(表1)、DP13-34は58.9-63.8%の範囲(4.9ポイント)、DP≧35は8.2-11.6%の範囲(3.4ポイント)で変動する。この差は、側鎖長分布の違いにより老化速度が速いことが報告されているパンコムギのモチ性系統あるいは登熟温度が高い試料と対照との差と同程度である。従って、これらの属の植物には澱粉の老化特性に影響を与える程度の側鎖長分布の変異が存在する。
成果の活用面・留意点 1.
澱粉の側鎖長分布が種間で類似しているので、パンコムギに耐病性等の遺伝子を近縁種から導入する場合にも澱粉の特性が著しく変化する可能性は低い。
2.
パンコムギの品種系統間に近縁種と同程度の変異が存在する可能性があるので、既存の遺伝資源の調査が必要である。
3.
パンコムギのモチ性系統は、ウルチ性系統と比べて、DP6-12の割合(%)が0.1-1.3ポイント少なく、DP≧35が0.3-1.7ポイント多いこと、登熟温度が高いものは、登熟温度が低いものと比べて、DP6-12の割合が2.7-5.4ポイント少なく、DP13-34が1.7-3.9ポイント多く、DP≧35が1.1-2.2ポイント多いことが報告されている。
図表1 220040-1.gif
図表2 220040-2.gif
図表3 220040-3.gif
カテゴリ 遺伝資源 加工 小麦 品種

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