タイトル |
豚の脂肪の締まりの客観的評価と市場評価との関連性の解明 |
担当機関 |
大阪食技セ |
研究期間 |
2002~2006 |
研究担当者 |
因野要一
西岡輝美
石塚譲
中村隆
入江正和(宮崎大)
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発行年度 |
2006 |
要約 |
市場流通豚の脂肪について、皮下脂肪や筋間脂肪と相関の高い腎臓周囲脂肪を用いて締まりを客観的に 評価し、市場での評価が良い脂肪品質を推定する。
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キーワード |
豚、脂肪、食品残さ、硬度、理化学的測定値
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背景・ねらい |
循環型社会の構築は日本における主要課題の一つであるが、大量の食品廃棄物が焼却され、 ダイオキシンの発生、地球温暖化ガスの排出等、環境汚染の原因になっている。現在、食品リサイクル法が 施行され、食品残さの飼料化が推奨されているが、食品残さを肥育豚に給与した場合、脂肪の品質が 変動しやすく、脂肪の締まりが悪い「軟脂」の発生が危惧される。このため、今後食品残さの有効利用を更に 拡大していくためには、現状では明確な数値や評価基準がない脂肪の締まりや好ましいとされる品質を客観的に 捉え、その情報を生産現場にフィードバックすることが必要である。 本研究では、食品残さを利用し、高品質豚肉を生産する際の基礎資料とするため、豚の脂肪の締まりを 客観的な数値として評価する方法を開発するとともに、市場での評価との関連性を明らかにし、評価の良い 脂肪の締まりの範囲を推定する。
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成果の内容・特徴 |
- 皮下脂肪や筋間脂肪の品質と相関が高く、硬軟の判断がしやすい腎臓周囲脂肪を円柱形にくり抜き、 インストロン物性測定装置により圧縮した際に得られる値(N)を硬度とすると、硬度は、加熱抽出して 得られる脂肪の理化学的測定値のうち、融点、屈折率、飽和脂肪酸含量と相関が高い (表1)。
- 市場から採取した腎臓周囲脂肪179検体の硬度は、0.79~33.43 Nと個体差が大きい。
- 市場で採取した腎臓周囲脂肪の締まりについて、市場関係者により大変軟らかいまたは大変硬いと 評価された2検体を評価値1(大変軟らかい)、及び6(大変硬い)の基準とし、触感によって6段階に 評価した。得られた締まりの評価値と硬度との間には、曲線的な強い相関関係が認められる (R=0.96, 図1)。
- 得られた回帰曲線から締まりの評価値を基準にすると、脂肪は、硬度によって2 N未満 (大変軟)、 2~5 N (軟)、5~7 N (やや軟)、7~10 N (やや硬)、10~16 N (硬)、16 N以上(大変硬) 6グループに分類できる(表2)。
- 市場で採取した脂肪179検体は、それぞれ「大変軟」から「大変硬」の各グループに5、19、21、29、 50、55検体が分類される(表2)。このうち、「大変軟」から 「やや軟」のグループには脂肪の質が原因で格落ちしたものが、「大変硬」のグループには市場関係者に 硬すぎると評価されたものが含まれる。このことから、「やや硬」から「硬」にあたる硬度7~16 Nが 市場評価の良い範囲と考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
- 食肉の脂肪の硬度を客観的に捉えた情報を生産者にフィードバックすることによって、食品残さを 用いた豚肉の品質が向上し、食品残さの飼料としての利用が進む。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
くり
評価基準
豚
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