タイトル |
DNAマーカーによる兵庫県産タマネギの品種識別法 |
担当機関 |
兵庫農総セ |
研究期間 |
2003~2005 |
研究担当者 |
玉木克知
山元義久
小林尚司(兵庫農総セ
淡路農技セ
農業部)
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発行年度 |
2006 |
要約 |
他殖性作物であるタマネギにおいて、既知品種についてDNAマーカー保有率のカタログ化を行い、被識別品種のDNAマーカー保有率を統計的に検定することによって品種識別が可能である。
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キーワード |
タマネギ、他殖性作物、DNAマーカー、品種識別
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背景・ねらい |
兵庫県淡路島産のタマネギは良食味で知られ、市場評価の高い特産物である。近年、低価格の輸入品が 増加し、「淡路たまねぎ」と偽装表示される恐れが指摘されている。そこで、DNAマーカーを用いて兵庫県で 栽培されている品種の識別手法を開発して、偽装表示対策の一助とする。 しかし、他殖性作物であるタマネギは遺伝的に固定されておらず、同一品種内でもDNA多型が存在するため、 DNAマーカーによる品種識別は不可能とされていた。ここでは、各品種の複数個体について個体ごとに DNAマーカーの有無を調査し、DNAマーカー保有率に有意な差があるかを検定することにより品種の識別を行う 手法の開発をめざした。
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成果の内容・特徴 |
- DNAマーカーとしては、臼井ら(2006)※が開発した19種のSTSおよびCAPSマーカーを 用いる。検出条件は、それぞれのマーカーに適した方法で行う。
- 兵庫県で栽培されている品種の複数個体から個体ごとにゲノムDNAを抽出する。 それらを鋳型にPCR反応を行い、それぞれの品種について調査個体数と各マーカーを保有している個体数を 記録してカタログを作成する(表1)。
- 識別を行いたい品種または個体群(被識別品種)について、同様に複数個体で各マーカーを有する 個体数を調査する。
- 被識別品種とカタログ記載品種との間でDNAマーカー保有率に有意な差があるかを検定するため、 被識別品種の調査個体数をn1、マーカー保有個体数をx1、カタログ記載品種の 調査個体数をn2、マーカー保有個体数をx2として、式1によって標準正規分布 変数zを算出する。
- |z|の値を表2の数値と比較し、0.1%水準で有意に異なるマーカーが1つでも存在すれば、それらが同一品種であることは「極めて疑わしい」と判定することができ、1%水準で有意に異なるマーカーが存在すれば、同一品種であることは「疑わしい」と判定できる。
※臼井ら(2006)日本食品科学工学会誌 53(9):498-504
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成果の活用面・留意点 |
- 調査個体数は30個体以上が望ましいが、現実的な対応として、カタログ作成用として24個体以上、被識別品種は16個体以上あれば実用的な精度で検定を行うことができる。それ以下の個体数では、異なる品種であるにもかかわらず同一品種と判定される誤りが増加するので、できるだけ調査個体数を確保する。
- 各品種の多型頻度は毎年わずかずつ変動することが予想される。数年おきにカタログを作成し直すことが望ましい。
- 適当なDNAマーカーを開発することによって、他の他殖性作物にも適用可能である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
たまねぎ
DNAマーカー
品種
良食味
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