タイトル |
兵庫県における土壌診断による玄米カドミウム濃度のリスク予測 |
担当機関 |
兵庫農総セ |
研究期間 |
2002~2006 |
研究担当者 |
好昭宏
吉川年彦
桑名健夫
津高寿和
河野 哲
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発行年度 |
2006 |
要約 |
水田作土の可溶態カドミウム濃度と土壌pHを測定することにより、玄米のカドミウム濃度の最高値が 予測できる。作付け前にリスク程度が把握できるため、生産現場に対して、きめの細かな指導が可能になり、 カドミウム吸収抑制対策が効率的に実行できる。
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キーワード |
カドミウム、土壌可溶態濃度、土壌pH、玄米、リスク予測式
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背景・ねらい |
2006年度、米のカドミウム濃度の国際基準値が設定された(精米0.4mgkg-1)。 国際的な動きに呼応して、近年国内でも玄米カドミウム濃度の監視が厳しくなっている。かつて、 汚染指定地域を有した兵庫県では、対策工事が完了した周辺地域で生産される米のカドミウム濃度が懸念され、 適切な営農指導が望まれている。現行法の下で、濃度が0.4mgkg-1以上の玄米を出荷、 流通させないことが最優先課題である。そこで、カドミウムを巡るリスクを低減する方策の一つとして、 栽培を開始する前に収穫予定玄米のカドミウム濃度を予測する技術を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 土壌可溶態(1/10M塩酸可溶)カドミウム濃度が異なる現地沖積水田の作土3種類(すべて灰色 低地土、埴壌土〔A:1.00 mgkg-1、pH6.9〕、〔B:2.63 mgkg-1、pH6.7〕、 〔C:1.28 mgkg-1、pH6.1〕)を準備し、希硫酸と希水酸化ナトリウム液で土壌pH(水浸) を数レベル設定する。1/2000aワグネルポットに充填し、カドミウムの吸収を促進させる節水管理 (排水口にガラス管を立て、生育に応じてその角度を傾けて水位を低く調節)で水稲「日本晴」 を栽培する。玄米収比は常時湛水無処理区を100として、A:76~84、B:42~84、C:90~104である その玄米のカドミウム濃度と収穫後の土壌pHの関係を見ると、同じ土壌では負の相関関係が強いが、 3土壌を合わせると相関係数が大きく低下する(図1)。
- しかし、玄米カドミウム濃度を土壌可溶態カドミウム濃度で割った値と土壌pHの関係を見ると、 3土壌合わせても相関の強さはそれほど低下しない。玄米カドミウム濃度に及ぼす土壌可溶態カドミウム 濃度の影響は土壌pHにより異なり、pHが低いほど強く関与することを示している。そこで、 この関係式から玄米カドミウム濃度の予測式 [ 予測値 =(-0.269 ×〔土壌pH〕+ 2.14)× 土壌可溶態カドミウム濃度 ]を導き出すことが できる(図2)。
- この予測式の現場適応性を、作付け前に作土を採取し、収穫時は20株を立毛調査する方法で 3年間にわたり検討したところ、実測値は最高でも予測値の88%であり、予測値を超えることはない (図3)。実測値の低さは、栽培前の診断結果に基づき、 湛水栽培の指導等吸収抑制のための営農指導が功を奏しているためと考えられる。
- 本予測式では、可溶態カドミウム濃度1.0mgkg-1 以下、かつpH6.5以上なら玄米濃度は 最高でも0.4mgkg-1以下になる。3年間の現地ほ場における調査結果と照らし合わせると、 より甘い条件でも0.4mgkg-1以下達成は可能である (図4)。しかし、厳しい予測値を提示する本予測式は、 現場における吸収抑制指導には大いに有効である。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果による予測式は、本県の対策完了地域の周辺地域において適用できる。
- 実測値の大幅な低下を目指し、現場の危機意識を喚起するために本予測式を活用する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
出荷調整
水田
土壌診断
水管理
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