タイトル |
ウンシュウミカン主幹形仕立てと改良型ノズルによる農薬散布量の削減と省力化 |
担当機関 |
広島総研 |
研究期間 |
2003~2007 |
研究担当者 |
中元勝彦
見世大作
建本 聡
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発行年度 |
2007 |
要約 |
急傾斜ウンシュウミカン階段園で樹形を慣行の開心自然形から主幹形に変更すると、農薬の散布作業時間が2/3に短縮でき、黒点病の防除効果が高まる。さらに、改良型ノズルを用いた2面散布では、散布時間を1/2以下に短縮でき、散布量を3/4に削減できる。
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キーワード |
急傾斜地、ウンシュウミカン、主幹形、農薬散布、ノズル、省力、散布量
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背景・ねらい |
急傾斜ウンシュウミカン階段園で果実の高品質化と樹体管理の省力化を図るために、当センターでは、慣行の開心自然形仕立て(以下、開心自然形)に替えて、樹幅が狭く、0.7mの作業道を確保でき、品質のバラツキが少ない主幹形仕立て(以下、主幹形)を用いた技術開発を進めている。しかし、主幹形に適した農薬散布技術は未開発である。 そこで、散布竿を持って作業道をまっすぐに歩く要領で、主幹形樹の頂上枝から裾枝までの片面を一度に散布できるノズルを試作し、散布作業の省力化と散布量の削減を図る。
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成果の内容・特徴 |
- 改良型ノズルは、表1に示す部品を用いて、新広角スズラン5頭口ノズルと竿を1本のホースで連結し、接合用のステーをT字型に組み合わることにより、進行方向や風向きに応じてノズル管の角度を155°反転できるものである(図1A)。
- 改良型ノズルの総重量は1.43kgで、慣行のキリナシ2頭口ノズル(以下、慣行ノズル。図1B)の0.27kgに比べて約1kg重くなる。しかし,散布中の手や腕の負担度は、男女5人の被験者(33~64歳)によるボルゴスケール法を用いた主観的評価(負担度0~10)によれば、いずれのノズルも大変弱い痛み(1.2~1.3)に分類され、同等である。
- 農薬散布時間は、樹形による差が認められ、主幹形は開心自然形(図1C)の約2/3に短縮できる。さらに、改良型ノズルを用いた2面散布(図1D)を行うことで、約1/2以下(緩傾斜園で約1/3、急傾斜園で約1/2)に短縮できる(表2)。なお、2面散布の作業強度は、緩傾斜園も急傾斜園も開心自然形の全面散布と同等である(表2)。
- 農薬散布量は、樹形による差がみられず同等であるが、改良型ノズルを用いた2面散布では約3/4に削減できる(表2)。
- 成木園における主幹形の2面散布の農薬付着程度は、開心自然形の全面散布に比べて、葉裏で7.9とやや低く、それ以外の部位では8以上で他区と同等である(表3)。
- 散布50日後(10月17日)における成木園の黒点病発病果率は、主幹形が開心自然形に比べて低く、防除効果が高い(表3)。なお、散布方法による差はみられない。
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成果の活用面・留意点 |
- 身長1.5m以上の作業者が、幅員0.7mの作業道と段差0.9m以内の階段園または緑地に植えられた幅1.5m、高さ2.3m以内の果樹または生垣に対して、動力噴霧機を用いて手散布する場合に活用できる。
- 5頭口ノズルから噴出される霧は粒径が小さく飛散しやすいので、強風時には使用を控えるか、飛散の少ない慣行のキリナシ2頭口ノズル等を用いる。
- 本試験で用いた改良型ノズルは製品化されていないが、農機具店等で表1に示す部品を購入すれば自分で組立できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
病害虫
温州みかん
傾斜地
省力化
農薬
防除
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