タイトル |
国内初のトスポウイルスCSNVによるキク茎えそ病(新称)の同定と診断 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 |
2007~2007 |
研究担当者 |
奥田 充(九州沖縄農研)
久保田健嗣(九州沖縄農研)
松浦昌平
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発行年度 |
2007 |
要約 |
2006年、広島県内の施設キクにおいて発生したTSWVに酷似したウイルス症状は、日本で未発生のトスポウイルスであるChrysanthemum stem necrosis virus (CSNV)と同定し、RT-PCRで検出できる。その主要媒介虫はミカンキイロアザミウマである。
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キーワード |
キク、CSNV、茎えそ、トスポウイルス、ミカンキイロアザミウマ、媒介
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背景・ねらい |
2006年8月、広島県三次市の施設キク栽培農家1戸(10a)において、茎えそ、葉の退緑斑など、Tomato spotted wilt virus (TSWV)によるキクえそ病に酷似するウイルス性病害と考えられる症状が発生し、著しい被害をもたらした。そこで、本ウイルスの同定を行い、併せてその媒介特性を明らかにし、識別可能な特異的な診断法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 施設キクで発生したウイルスはChrysanthemum stem necrosis virus (CSNV)と同定し、「キク茎えそ病(新称)」と命名された。
- 発病キクでは激しい茎のえそ条斑と葉の退緑、えそ斑点および輪紋を呈する。病徴は上中位葉に生じ、病徴を呈した葉の位置は不規則で、TSWVによるキクえそ病に酷似する(図1)。
- 汁液接種による本ウイルスの寄主範囲調査では、トマト、ピーマンに全身感染し、ペチュニアに局部病斑を呈するなど、既報のCSNVの寄主範囲と類似する(データ省略)。
- 本ウイルスはELISA法(直接法)でCSNV抗体と強く反応し、TSWV抗体とはわずかに交差反応を示す(図2)。
- 発病キクをTSWV、Impatience necrotic spot virus (INSV)の特異的プライマーによるマルチプレックスRT-PCRに供試すると陰性であるが、トスポウイルスのユニバーサルプライマーでは陽性である。また、得られたNタンパク質遺伝子増幅断片の塩基配列は既報のCSNVのそれと98%の相同性を有する(データ省略)。
- 感染植物上で発育したミカンキイロアザミウマ幼虫は、成虫になった後、CSNVを媒介する(表1)。
- 特異的なプライマーを用いたワンステップRT-PCRによって、本ウイルスを特異的に診断できる(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- TSWV抗体によるELISA法(直接法)ではわずかに反応するので誤診に注意する。
- 広島県での主要媒介虫はミカンキイロアザミウマと推察されるが、ブラジルなど海外ではFrankliniella schultzeiが主要媒介虫であると報告されている。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
きく
トマト
ピーマン
ペチュニア
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